baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 続〜TPP交渉加盟議論に思う

 野田佳彦APECでTPP加盟交渉の準備交渉を始めると昨日表明した。国内の反対派を意識したまどろっこしい言い方だが、要するに既に条約を批准している一期生の4ヶ国と現在交渉中の米国を初めとする二期生の5ヶ国が同意するならば、日本も加盟交渉に参加したいと言った訳である。各国は日本の参加表明を好感し、それを待っていたかの様に今日カナダとメキシコも同様の意向表明をした。
 これこそが国際交渉である。日本の参加意思表明が他の2ヶ国の後押しをした。カナダなど一度は断られているのに改めて参加を求めて来ているのは、日本を頼みにする処があるからか、或いは日本を無視できないからであろう。参加国が増えれば条約を纏めるのは難しくなるが、例えば日米関係だけで言えば日本の立場は相対的に強化され、米国の立場は相対的に低下する。幾ら米国が自国の国益を押し通そうとゴリ押ししても、豪州、カナダ、ニュージーランドなどが居り、マレーシアやシンガポールが居れば日本が孤立無援になる事もなかろう。勿論日本も自分のエゴだけを押し通す事は出来なくなるが、長い目で見れば結局はその方が良い。アジアの国々は今迄米国に押されっ放しだったのが、日本の参加によりやっと力がバランスすると期待していると言うニュースがある。他方、中国は自らが日本と組んでアジアでの影響力を維持しようと目論んでいたのが、日本が米国に取り込まれたとショックを隠せないようである。日本が国内で喧々諤々の議論をしている最中に、日本を取り巻く国際的な思惑は日々変幻している。
 農業問題は次元が異なるのでここでは除外するが、それ以外の昨今の国内のTPP反対派の論調は、基本的に考え方が受け身で、日本が交渉の一方のリーダーたらんとする意欲が全く見られない。常に日本は米国の言いなりの主体性のない交渉をする事が前提で、だから国益に反する条約になるとか不平等条約になると言った悲観論ばかりである。確かに集団的自衛権を放棄している日本の軍備は極めて限定的で、戦略的にも先制攻撃などが封じられている手前、自国の安全保障をも全面的に米国に委ねざるを得ない現状では、米国に対する発言が必ずしも対等とは言えないであろう。しかしだからと言って遠慮に明け暮れる時代はとうに過ぎている。そしてやっと米国に対しても少しづつ物が言えるようになってきた昨今であるから、国際舞台における日本のこれからは、例えばTPP交渉ではアジアを代表して米国と対峙するような交渉をして行かなければならない。それこそが今日本が国際的に求められている役割であろう。
 米国は早速日本に対して、自動車、郵政、牛肉の問題を提起して来たと言う。自動車については何が問題なのか僕は不明なのだが、車検の事であろうか、或いは排ガス規制の事であろうか。もしこれ等の事であるなら、原則何れも譲るべきではなかろう。もし車検を止めたらタイヤ交換も出来ない人が増えている中で、整備不良の車ばかりで危なかしくて仕方がないし、狭い国土の日本で汚ないガスを撒き散らされたら堪ったものではない。問題がそこにあるのなら、日本の排ガス規制や食品の安全基準をむしろ米国に押し付けるぐらいの気迫で交渉すべきである。必要ならば、有償で技術も開示してやれば良い。郵政は日本国内でも銀行や保険業界の足を引っ張っている悪しき旧弊であるから、世の流れに即して改革せざるを得まい。その結果どこかの泡沫政党が崩壊するなら崩壊させれば良い。
 牛肉については、僕は未だ意見を言えるほどの知識がない。ただ日頃思うのは、米国の成牛管理が極めて杜撰な事である。米国では労働者の質が低く日本のような管理は到底期待できないから、ICチップによる全頭管理など管理の徹底を要求すべきであろう。既にICチップ化されているならともかく、もし未だなら西部開拓時代の昔は全頭に焼印を押していたのだから、現代なら全頭にICチップを埋めること位簡単であろう。そして、屠殺して解体する度に大本のICチップから派生したICチップを枝肉一つ一つに、内臓一つ一つに付けて管理する位にしないと、幾ら年齢制限を付けたところでどこで混ぜこぜになっているか分かったものではない。日本のICチップが売れて一石二鳥である。
 何れにしてもTPP交渉は、これからが国益を賭けた正念場である。環太平洋の有力な国々が参加意思表明をしているのだから、事案毎に上手く同盟を築いて日本にとって妥当な着地点に纏め上げるべく、政府と官僚が力を合わせて交渉に当たらねばならない。そして将来的にはこのTPPをその拡大過程において、一層日本の国益を追求し得る絶好の場となるよう育てねばならない。