baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 路上の窃盗犯射殺を目撃

 当地の警察は簡単に容疑者を射殺する話を昨日このブログで書いたばかりであるが、そんな話が昨日現実に目撃された。と言うと僕が目撃したようであるが、幸か不幸か目撃したのは僕ではない。
 僕は昨日はたまたま車を借りていたのだが、夜その車を貸して欲しいという要請が元の会社の仲間からあったので仕事優先で車を回してあげた。お人好しをしたら夜雨が降ってタクシーが中々捉まらずに往生し、雨の道端で濡れながら流しのタクシーを待って少し後悔したという余談が付くのだが、それはさておき。僕の車の運転手は件の日本人を乗せて、日本食専門のスーパーマーケットのある地域の焼き鳥レストランに向かったそうだ。未だ早い時間だし折からの雨で車は大渋滞だった。ある交差点で突然後から軽く追突されたので、慌てて車から降りて後ろをチェックしようとしたところ、後続のワンボックスカーのドアミラーが両側から外され掛けているところだった。
 元々当地には車の部品やアクセサリーの盗品市場があるので、ホイールキャップなどはよく盗まれる。ドアミラー泥棒は98年の通貨危機を境に大変流行った窃盗で、一時は赤く着色した手斧を持つ「赤斧団」という窃盗グループが跋扈したこともある。手口は渋滞や信号で止まっている車に二人組、ないし三人組が両側から近づきいきなりドアミラーを外して逃げてしまう。車から降りて抵抗しようとすると斧で脅されたり、本当に刺されたり殺されたりする。当時は僕の会社の仲間も一台やられたが、やられたら車の中でじっとしているしかない。降りて抵抗しなければ普通は乱暴はしない。偶にフロントガラスを割って前を見えなくされる事がある程度である。
 ところが、ドアミラーはベンツやトヨタの高い物は左右ワンセットで売ると2-3万円、物によっては5万円でも売れるそうで、この手の泥棒が後を絶たず、大分経ってからだが警察はドアミラー窃盗犯は現行犯の場合はその場で射殺すると公表し、よく事件のおきる場所には私服警官を張り込ませるようになった。それから時々窃盗犯射殺のニュースが流れるようになったが、手っ取り早い金儲けになるので向こう見ずな窃盗事件は中々止まらない。しかし、いくら射殺するとは言えインドネシアでも一応は警告射撃をし、次に足を狙うことになっている。
 昨日の話に戻る。運転手が車から降りて後ろを見ると、窃盗犯二名が左右から同時にドアミラーをあっという間に外し、逃走しようとした。と、その時何処からとも無く三名の私服警官がピストルを携えて駆け寄り、道路側から道路を横切って逃げようとする犯人をいきなり背後から撃ち倒した。撃たれた犯人は前のめりにつんのめってひっくり返り、そのままピクリとも動かなかった。撃った警官はそれからやおら二発、空に向けて威嚇射撃をしたそうだ。撃たれた犯人は、ドアミラーを外す手つきは慣れたもので常習犯のようだったというが、まだ二十歳そこそこの若者で、威嚇射撃も無しにいきなり撃ち倒すのは行き過ぎだと運転手は憤っていた。もう一人の犯人はその場は反対方向に逃げ遂せた由。運転手はと言えば、誤射が怖くて慌てて車に逃げ戻ったところ、後部座席の日本人に早く現場を離れるように指示されて、そのまま現場を去ったとのこと。目前5m位のところで人が撃たれるのを始めて目撃した彼は、今日も未だ興奮冷めやらない面持ちであった。
 警官が使った拳銃は僕が警察の地下試射場で遊んでいた38口径のS&Wダブルアクション・レボルバーではなく銃身の長い大型の拳銃だったそうだ。4-5mの至近距離から左の背中を撃たれたそうなので死亡した公算が大きい。当地の警察は現場で発砲する時は、足を狙うなどという面倒な事はせず初めから外し難い体を狙う。未だ人権よりも悪人には厳罰で臨む事を支持する大衆が多いので、冗談でも余り馬鹿なことをするとあっという間に命を落とす事になる。また警官の拳銃も飾りではなく直ぐに発砲されるし、発砲された結果誰かが射殺されても全く問題にもならないお国柄である。