baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 口蹄疫の殺処分

 未だに口蹄疫が猛威を振るう宮崎県では、家畜の殺処分が中々進まないらしい。対象頭数が多すぎるのに加え、埋め立ての土地も不足しているとの事。豚が罹患するとウィールスが牛の1,000倍から15,000倍の勢いで増加するそうだから、とにかくブタから処分するのであろう。豚は今でも毎日新たに生まれていると言う。殺される為に生れて来る子豚を思うと、何とも気が重くなる。増してや農家の思いは如何許りであろうか。
 一方で農水省は自分の初動遅れは棚に上げて、何が何でも対象地域の牛豚山羊は全て殺処分しろ、早くしろ、と檄を飛ばしている。地元の農家に言わせれば、今殺せ殺せというのなら、何故もっと早く消毒薬を送ってくれなかったのか、口蹄疫発生が判明してから国が送って来た消毒薬が届くのに8日掛った、もっと早く届いていればここまで蔓延しなかったかも知れない、と嘆いているとの報道があった。タラレバの話ではあるが、手塩に掛けた家畜がみすみす殺される農家にしてみれば、恨みの一つも言いたくなるであろう。8日は幾らゴールデンウィークだったからとは言え時間が掛り過ぎている。
 一つには、口蹄疫発生が確認された時に赤松農水大臣が外遊中で政務三役が揃わず、政治主導下官僚は勝手に動けないので無駄な時間が流れたのであろう。更に、民主党出身の政治家は大臣も副大臣も危機管理の経験がないから、一層初動が遅れたのであろう。今は時差さえ厭わなければ、大臣が何処にいようと留守居役は直ぐに電話連絡がとれるのだから、大臣の外遊も実際には大した理由にはならない。官僚のサボタージュと言う民主党幹部もいるようだが、官僚を排除して政治主導と唱えたのは民主党自身である。結局、閣僚経験者も殆どいない民主党議員に政治主導は未だ無理だったと言う事だ。
 しかし最初の発生から既に一ヶ月以上も経過し、取り敢えず危険地帯の殺処分が進んで来て一応緩衝地帯も出来つつあるのだから、殺処分の対象は少し選別し始めても良いのではなかろうか。既に二週間以上も発病していない家畜でも、単に殺処分対象地域だからという理由で問答無用で屠殺する時期は過ぎたのではないかと思うのだ。勿論これから潜伏期間が過ぎて新たに発病する家畜も未だ出て来ようから、厳重な管理と注意、徹底的な消毒は続けなければならない。更に、ワクチンを接種された家畜は保菌しているのでどうしても殺処分にしなければならないそうだから、助けられるかも知れない対象がどの位いるのか実は僕には分からないのだが、ワクチン未接種で且つ未だ発病していない家畜については、一定の条件を満たしていれば経過観察に切り替えても良いのではないかと思う。20万頭以上も間引かれてしまえば、伝染もある程度下火になるであろう。素人考えではあるが、そろそろ地域や周囲の罹患状況などを肌理細かくチェックして、多少柔軟に対処方法を決めても良い時期に来ていると思う。特に貴重で生育に時間の掛る種牛は慎重を期すべきである。
 一旦殺処分と決めたら対象地域の家畜は全頭殺処分しなければならないと言うのは、昭和30年代に干拓をして農地にすると決めたからと言って、耕作放棄地が沢山ある現在に至るも未だ干拓事業を続けている馬鹿な話と同根である。特に種牛についてはFAOの専門家も「流行の初期には殺処分は非常に有効な対策だが、ある程度蔓延してしまった現在は貴重な資源を無駄にしないように慎重に対応すべきだ」と単に何でもかでも殺処分にすれば良いと言う現在の政府の対応に警告を発しているそうである。先日宮崎県に送った僕のエールは全く間違っていた訳ではなかったようである。農水省も紋切り型の対応から状況に応じた対応に切り替える時期ではないか。改めて専門家会議などを開き至急検討して欲しいものである。殺人事件ではあるまいし、法律を振りかざすだけでは余りに能が無い。