baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 インドネシア人権活動家が死傷

 実はまた30日からインドネシアに出張している。昨夜のテレビニュースはどの局もガザに向かった人道支援船団をイスラエルの特殊部隊が急襲し、10名の死者と数十名の負傷者を出した事件一色であった。死傷者の中にインドネシア人も含まれていたからである。昨晩の時点でインドネシア人は死亡1名、負傷3名が確認された。総勢600名の乗船者の中にインドネシアからは人権活動家、緊急医療援助要員、ジャーナリストなど12名が乗船していて、不幸にもそのうちの4名が凶弾に倒されたのだから皆興奮口調である。そして残りの8名の消息は全く掴めていない。中東各地の大使館が総出で8名の安否を調査しているようである。
 もともとイスラム教徒の人口が一国としては世界最大のインドネシアなので、親パレスチナ・反イスラエル感情は根強い。穏健イスラム教の指導者であったワヒッド大統領時代にはイスラエルとの国交樹立を目指し外交パイプを開いた時期もあったが、結局は国内外での足並みが揃わず国交開始までには至らなかった。その後は現在に至るまで新たな動きはないまま国交断絶が続いている。
 イスラム教国に住んでいると、元々中東問題では西側の情報に偏っているニュースを見ている日本人としては、時々ハッとさせられる時がある。例えばイラククウェートに侵攻した湾岸戦争の時、日本人は誰でもイラクの侵攻を怪しからんと断じ、米国を中心とした同盟軍が参戦した時にイラク軍を応援した人はいなかったであろう。ところが、インドネシアではイラククウェート侵攻を良しとする人は全くいなかったが、同時にイラク軍に対する国際同盟軍の一方的な殺戮、特に圧倒的な空軍力によるイラク爆撃には物凄い反発があった。時には、アメリカから流れてくるニュースを見ながら、イスラム同胞の悲劇に涙する人もいた。同じニュースを見ている日本人グループが横で思わず快哉の歓声を上げたので、僕は場所を弁えろと窘めたものだ。
 今回の事件でも、イスラエルの暴力に対する憤懣は大変なもので、ガザ地区パレスチナ人の援助を善とし、海上封鎖、経済封鎖を強行し、更には武力攻撃まで辞さないイスラエルを擁護する論調は全く無い。実際、今回のイスラエルのテロ行為はどう正当防衛と強弁しても許されるものではないと僕も思う。テロと言えばアルカイダタリバンイラクの反政府組織、ロシアの武装組織、フィリピンのゲリラ、など挙ってイスラム原理主義を標榜しているので、特にイスラム教に対する正しい知識がない西側世界ではテロ=イスラム教という偏見に満ちている。欧米ほど徹底してはいないが、基本的には日本でも例外ではないと思う。しかしイスラム原理主義はもはや本来のイスラム教からは逸脱しており、例えばインドネシアの一般のイスラム教徒は原理主義者はイスラム教徒とは認めない。むしろテロリストと混同される事に大変な迷惑を感じている。
 何れにせよ、イスラエルにしろイスラム原理主義者にしろ、テロ行為という卑劣な行為で徒に一般人の殺傷を行う事は許されざることである。その意味では、本来アメリカはアフガニスタンイラクのみならず、テロ国家イスラエルの政権も転覆すべきであると思う。イランの核開発のみならず、イスラエル核兵器保有も断じなければならない筈である。北朝鮮と同レベルの国、イスラエル核兵器保有していると言うことは、北朝鮮テポドン保有とは比較にならない恐怖である筈だ。
 イスラエルは国家の体を装った公然たるテロ組織だから、国際法も何もあったものではなく、自己防衛を理由に何でもやる国である。他国をいきなり爆撃したり、今回の事件のように公海上で特殊部隊を使って問答無用で民間人を一方的に殺傷し外国船団を拿捕する。悪名高いモサドは欧州諸国の偽造パスポートを使い、外国にいるパレスチナ人幹部の暗殺を平然とやる。パレスチナとの国境を勝手に動かして、入植と称してパレスチナ侵略を続けている。パレスチナ人が反発すれば圧倒的な武力で一般人や婦女子をも平気で殺戮する。そもそもガザ地区の経済封鎖も、国際法上は何の裏づけもなく、勝手に自国の利益の為だけにやっており、ガザ地区パレスチナ人は食料にも医薬品にも事欠く毎日を故なく強いられている。言ってみれば、イスラエル自らが毎日筋金入りの反イスラエル人を養成しているのと同じである。
 これらの行為は本来許されざる事なのだが、強力なユダヤ人同士の連携でアメリカの政財界はユダヤ人の強い影響下にあり、誰が大統領であってもアメリカは絶対に本気でイスラエルを非難しない。欧州ではドイツは勿論ユダヤ人には物が言えない、英国は国際法上は不条理にイスラエルを強引に建国して自分の国からユダヤ人を厄介払いした歴史があるから、これもまた何も批判できない。そして一般的に金融界はユダヤ人に握られているから、それ以外の政府も面と向かってはイスラエルを非難しない。結局欧米が本気で非難しない事を逆手にとってテロ行為をやりたい放題にやっているのがイスラエルである。そして今回の事件のように、自ら反イスラエル感情を世界中に醸成しているように見える。悪循環である。
 ゴールデンウィークの直前にイスラエル副首相が、対イラン制裁網に加担するよう日本を説得しに来日した。しかし今回の事件を見るにつけ、日本としては西側の偏った情報や心情に無条件に組することなく、冷静且つ公平に、客観的判断に基づいて行動すべきである。元々イスラム教国としては親イスラエルだったトルコが、昨日テルアビブから大使を呼び戻したそうであるが、日本人に被害者が出なかったとは言え今回のイスラエルの暴挙には日本も駐イスラエル大使を呼び戻して抗議の意を表しても可笑しくない。こういう時に米国追随一辺倒ではない独自の外交政策を打ち出すことこそ、本来の米国との対等の関係ではなかろうか。