baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 鳩山総理の辞任と今後の政局

 やっと迷走内閣が辞任する事になった。この8ヶ月の民主党政権の迷走、混乱、無責任、虚偽、そして政治資金問題などを考えれば当然の辞任である。鳩山由紀夫には首相としての資質が欠けていた事は誰の目にも明らかであったから、そもそもの民主党内の人選が間違っていたという事になる。恐らく、鳩山由紀夫としては今辞めてダメな首相として後世に名が残るのを避けたかったであろうし、その結果として彼がコンプレックスを抱き続ける祖父に追いつけなかった事も残念で、最後まで悩んだ事であろう。占い師に絶大な信用を置いていると言われる幸夫人を説得するのにも時間が掛かったかも知れない。
 差し違えの形で小沢一郎も辞任する事になった。参院選で何としても過半数を取ると、民主党幹事長として国政には見向きもせずに選挙戦に集中して来たから、彼も残念であろう。テレビのニュースでは、鳩山の両院議員総会での辞任発表のあと、あの小沢一郎が涙ぐんで見えた。しかし、自身の政治資金規正法違反については国民の大半は従来の説明だけでは納得しておらず、当人は「不起訴処分となったのだから自分の潔白は証明された」と強弁を続けたが、国民の不信を拭うには程遠かった。
 そもそも今回の混乱は、政権奪取を至上として、政策の違いを全く無視して連立内閣を作った小沢一郎の非に帰する処は大きい。普天間の問題にしても、全く相容れない社民党を政権内に抱えていた事に既に根本的な問題があった。それに輪を掛けたのが首相の不勉強、優柔不断、次々と口にされる無責任な発言、そして夢と現実の混同であった訳だ。また、閣僚発言の不一致などは日常茶飯事で、首相のリーダーシップ不足もしばしば指摘された。
 しかしこうして振り返って見ると、一番の大元にはやはり野党しか経験のない議員が急に与党になる事が如何に難しいかという事があるように思われる。野党であれば、与党に反対だけしていれば良かった。反対は分かるがそれなら具体的にどうする積りだ、という部分には無責任で構わなかった。だから普天間問題での社民党のように、沖縄県民の人気取りだけに集中して、当面全く実現する可能性のない「県外、国外」を言い続けられる訳である。その意味で、社民党には全く与党としての自覚も能力もなかったと言える。閣僚の発言にしても、自分が外野から無責任に野次を飛ばし政権を批判しているだけの、気楽な時のクセが抜けていない。つい軽い言葉が口をついて出てしまう。危機管理にしても、全くその責の中心にいる自覚がなかった訳だ。
 企業であれば、上から下まで基本的には常に夫々の責任を持って仕事をするから、上が替わって多少の方針変更があったとしても、各自は基本的に日頃から自分の責任を自覚し、それを果たす事には慣れているから大きな混乱は起きない。しかし政権交代は、国政に責任を持つ与党と、無責任に何でも反対して後は外野から野次を飛ばすだけで良かった野党が入れ替わる訳だ。それでも欧米のように二大政党が8〜10年位を節目に交代し慣れていれば良いが、日本のようにほぼ50年も一党独裁が続いてしまったので、野党議員には閣僚経験者も殆どいないし、野党根性が骨の髄まで染み込んでしまったのである。だから政策マニフェストも財源の伴わない、夢のような無責任な物になってしまった。国政運営の難しさを知らないから、政治主導などという身の程知らずのお題目の下で経験豊かな官僚を政策決定や状況判断から外している。これなども、経験不足でやる事が極端に過ぎてしまい、バランスを欠いている一例である。
 こう考えてくると、民主党政権は単に首相と幹事長を下ろしただけでは本質的には何も変わらないと思われる。マニフェストの虚構も急に是正されるとは思えないし、参院選に向けた財源の伴わないバラ撒き政策も引き続き維持されるのであろう。そして何よりも、誰が次の総理や閣僚になっても、その経験不足と骨の髄まで染み込んだ無責任な野党意識は急には治るまい。
 理想を言えば捩れ国会を防ぐ為に衆参同時選挙が望ましい訳だが、今の状態では民主党には到底衆院解散の選択肢は取れない。となると、残念ながら我々国民は日本の国政の空転が今後も暫く続く事を覚悟しておかねばならないようだ。これも一党独裁が長すぎた事のツケと言う事だ。そして何れは衆院解散を経て与野党が交代すると思う。未だ今の民主党には長く政権を担う能力も人物もいない。今後、段々にそのインターバルが短くなって、与野党何れもが政権を担う経験を積めるようになれば良いのだろうが、残念ながらまだその道程は遠いようだ。