baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 ジャカルタ道路事情

 ジャカルタには南北に二本の目抜き通りが走っている。一本は真ん中に片側三車線の高速道路が走っており、その外側に各1車線のバス専用道路、更にその外側に各3〜5車線の一般道が走っている。もう一本は中央分離帯を挟んで公共バス専用車線が左右一車線あり、その外側に各3車線の一般道が走っており、3車線の外側にグリーンベルトか分離帯を挟んで更に2車線の一般道がある。バイクは分離帯の内側の3車線の部分には入れず常に外側の2車線を走らねばならない。また一般車はバスレーンと称されるバスの専用車線は走行出来ない。ところが、これだけ太い道であってもしばしば渋滞で動かなくなる。

(左側のグリーンベルトの更に左が高速道路。グリーンベルトの直ぐ右がバスウェイ、その右の三車線が一般道)

(左側のグリーンベルトの直ぐ右の車線がバスウェイ。渋滞をしり目にバスはスイスイ。右端のグリーンベルトの横に更に2車線の一般道があり、ここではオートバイはそちらを走らされるので、写真にはオートバイが一台も写っていない)
 そんな渋滞緩和を狙って、朝晩のラッシュ時には乗用車は3人以上乗っていないと市の中心部には入れないように規制されている。3-in-1(スリー・イン・ワン)と呼ばれる規制である。朝は6時半から10時まで、夕方は4時半から7時までである。3人のうち一人は普通は運転手だから、事務所への行きかえりは誰かと二人連れであれば良いのだが、お互いに面倒である。しかも、金持ちはボディーガードを連れて歩いているし、そうでなければジョッキーと称する相乗りを商売にする連中が道端に幾らでも立っているので、彼らを拾って乗せればそれで済む。だから余り実効はないのだが、それでも多少はこの時間帯を敬遠する風潮もなきにしもあらずである。逆に3-in-1の前後は渋滞に拍車が掛かり、時にはとんでもない渋滞が惹き起こされる。
 抜本的な渋滞緩和には地下鉄を建設するしかないのだが、アジア通貨危機とそれに続く長年の経済不振の影響で、計画は頓挫したままであった。やっと最近になり円借款が付いてプロジェクトが再び動き出したところである。計画では2016年にはインドネシアで最初の地下鉄が動きだす予定なのだが、2016年はとても無理としても今度は本当に地下鉄が建設されそうである。
 しかしそんな悠長な事を言っていられないのが現実なので、数年前から市の中心部の目抜き通りでは、上下各一車線をバス専用レーンとし専用の赤と黄に塗られたバスを走らせている。バスレーンは道路の中央にあるので、乗客は道路の端からとんでもなく長く、且つ折り返しになっている勾配の付いたアクセス路を上って歩道橋を渡り、また道路の中央の長い勾配を折り返して下ってプラットフォームにたどり着く。プラットフォームは地上から1m少々あるので、バスのドアも地上から120cm位の高さに付いている。このバスレーンのお陰で一般道は更に混雑しているが、バスはスイスイと走っている。ただ従来のバスは車内の治安が悪く、一般の人には公共交通機関を使う習慣が植わっていないので、バスレーンのバスはエアコンまで付けているのに未だそれほど普及はしていないようである。中産階級から上の人に敬遠される半面、初乗りが20円と下層の人には簡単に払える金額ではないのも普及を妨げている原因かも知れない。

     (プラットフォームから乗り降りする専用バス)
 高速道路はジャカルタを起点に西は西ジャワの外れのメラック、東は海沿いにチカンペックまで、またチカンペックの少し手前から南に下ってバンドンまで、更にジャカルタから真南にボゴールまで、何れも片側3車線の近代的な道が走っている。この高速道路には実は最高速度制限が設けられているのだが、実際にはスピード違反で捕まる事はないからまるでアウトバーンの如き趣である。幾ら飛ばしても捕まる事はないのだが、舗装が悪いから道が相当デコボコになっていて実際には精々150km位が限界である。それ以上出すと、時々天井に頭がぶつかったり車が大ジャンプをしたりする事になる。
 今日はジャカルタからタンゲランと言う、20〜30km離れた衛星都市に、メラックへ通ずる高速道路を使って出かけた。高速道路を走っている僅か20分位の間に、道端で転覆している大型トラックが2台いた。1台は転覆と言うよりはもう殆ど裏返しになっている。当地の高速道路は、一般に緊急車両用の路側帯の外側に大きな溝が掘ってある。トラックは2台とも、この路側の溝に飛び込んでひっくり返っているのである。路側の溝は、単に雨水を一時的に溜めるのみならず、暴走車を食い止める為に掘ってあったのだと初めて気付いた。だから12トン車だかもっと大きいのだか分からないが、大きなトラックがこの溝にはまって簡単に転覆するのである。大体当地の商用車は、荷物の積み過ぎ、擦り切れたタイヤ、過重労働の運転手、と三拍子揃っているのが普通だからトラックやバスの事故は珍しい事ではないのだが、それでも20分で2台は多い方である。
 2時間ほどタンゲランで過ごした帰路、2台の中の1台は既に撤去されていた。往路では未だ何ら作業は始まっていなかったから、復旧作業は結構素早いものだと思いつつ2台目を見てみると、数人の男がスコップを持って裏返しになっているトラックの周りを掘っている様である。クレーンでいきなり吊り上げるのではないらしい。一体どうするのだろうと、運転手に訊いたら別の大型トラックを持って来てロープを懸けて引き起こすのだそうである。今は引き起こせるように何か準備をしている処らしい。どうやって引き起こすのか見てみたい誘惑に駆られてしまった。ちょっと想像がつかない独創的な方法の様に思えたものである。もっとも疾走する車の横での作業であるから相当な危険が伴う筈なのだが、特段の標識も出さずに、増してや後方に旗を振る人形を乗せた小型トラックを止めるなどと言う日本では見慣れた景色もないままに、黙々と作業が続けられている風であった。