baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 飾り棚

 母親が生前大事に茶箪笥に飾っていた、子供や孫がお土産に買って来たこけしや人形を、父亡き後引き取って来た。我が家には茶箪笥もないし、本箱の上に並べていたのだが、どうしても埃が積もる。ところが小さいから不用意に掃除機を掛ければ吸い込まれてしまうし、デコボコしているから中々埃が取り難い。気になりながらも6年も経ってしまった。
 先日、突然思い付いて近所の人形屋に相談に行った。飾り棚を注文出来ないかと思い立ったのである。ところが、その作り雛屋でも飾り棚の注文は受けておらず、既製品の取り寄せだけだと言う。僕はガラスの中段のあるケースをイメージしていたので、ちょっと落胆したが、それでも6年も放ってあったぐらいだから、人形町や浅草橋にまでアテもなく探しに行く程の心算も無い。いい頃加減なところで、一番納まりの良さそうな寸法の物を一つ注文した。
 それが留守中に入荷したと言うので今日取りに行って来た。行って見れば昨日の今日だと言うのに、もう店中引っ繰り返した様な大騒ぎでお雛様を片付けていた。そこら中に処狭しと並んでいるのはどれも首から下ばかりで、もう顔は抜いて片付けてある。お節句のお雛様はこんなに急いで片付けないといけない物なのか、或いは商魂逞しく早々に端午の節句のお雛様や飾り物に入れ替えているものか。折から、桃の節句とは思えない真冬の寒さもあって、首なしの人形がずらりと並んでいるのは少々不気味な、寒々とした光景であった。飾り棚を受け取って、今日はそそくさと店を後にした。

 少し狭いのだけれど、今迄のように埃を被らなくて済むのだから人形達にはこれで勘弁して貰おう。どうしてもっと早く気付かなかったのだろう。