baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 徒然に

 昨夜は予定通り、金沢港の近くの寿司屋で大ぶりの蟹を堪能し、カニミソが入った熱燗を飲み、刺身をたらふく食べて、上がりに握りを少々、至福の夕食であった。金沢は本当に海の幸が美味しい。昔から金沢から来た人は、東京では刺身だけは食べたくないと異口同音で言うので、何と嫌味な人達かと思った事もあるが、今はその意味が良く分かる。
 昨日はその後思案橋近くのワインバーでワインをしこたま飲み、結局ホテルに戻ったのは予定通り3時になっていた。それでも最後はママに追い出されたみたいな塩梅であったから、無事に寝る事が出来て今朝も何とかベッドから這い出して朝風呂で目を覚ます事が出来た。
 夕方東京に戻ったが、今日は風が強くて東京からの便が少し遅れ、珍しく予定より少し遅れて羽田に着いた。強風の為機内サーヴィスはなく、特に着陸前には随分シェークされたが、それでも昔と違って今の飛行機は全然揺れない。どうコントロールしているのか知らないが、昔のDC-8は言うに及ばす、B747などに比べても飛行時の安定が抜群に良くなっている。飛行機の機体制御技術は日頃話題にならないから詳しい事は知らないが、実際に乗っていればその技術革新の顕著さは一目瞭然である。素晴らしいの一語である。
 羽田からの帰りの電車では、持って出た本を行き掛かりで金沢で取引先のオーナーに進呈した事もあり、何とはなく乗客を観察するしかやる事がなくなっていた。それで改めて気づいたのだが、昨日から暖かくなった事もあろうが、何とマスクをしている人の多い事か。斯くいう僕も花粉症だからマスクはするのだが、飛行機は元より電車でも外すことが多い。見ていると4人か5人に一人はマスクをしている。外国人がみたらぞっとする程異様な風景であろうと思う。東京中にエボラ熱が蔓延しているが如き趣ではないか。普段は気にもしていなかったが、そう思って改めて周囲を見回すと、間違いなく異様な光景である。誤解をされないと良いがと、思わず神頼みしたくなった。
 ターミナル駅から最寄りの郊外電車に乗り換えた。時間が未だ半端だったので勤め人風の姿は少なく、学生や主婦と思しき女性が多い。こちらは半分か4人に3人は携帯を手にして、一心不乱に何やらやっている。イヤフォーンを耳に入れ、ゲームなのかも知れない。或いはメールか何かを書いているのか、しきりに指は動いているのだが、何をしているのか僕には一向に分からず、聊か不気味である。生憎、半分壊れたキャリーバッグを引きづったホームレスのオジサンも乗り込んで来た。臭い。とにかく臭い。あろう事かそのオジサンに並んで座られてしまったので、僕は間髪を入れずに立ち上がって逃げ出した。我慢して横にずっといたら、洋服に匂いが移って使い物にならなくなる。そもそも、そんな悪習を我慢する義理など微塵もない。
 発車間際に小柄な年配女性が乗って来たら、僕の目の前で座っていた若者が突然席を立ってその女性に席を譲ろうとした。女性は丁寧に遠慮する。なんとも微笑ましい光景に、僕は思わず夫々に精一杯の笑顔を送ってしまった。そうしたら若者がはにかみながらも、精一杯の笑顔を返して来た。ホームレスの匂いに辟易していた僕は、その若者の笑顔ですっかり嬉しくなってしまった。