baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 渋谷で

 今日は渋谷の東急ハンズへ行って来た。東急ハンズは僕のお気に入りの店の一つで、渋谷と言う僕とは全く肌の合わない土地にも拘らず、東急ハンズだとノコノコ出掛けるのである。今日の目的は絵を吊り下げるワイヤーの買い出しである。
 40年前にダッカに駐在した時に、駐在の記念にと帰国辞令が出てから絵やロウケツ染めで風景を多色で染め抜いた布などを買って帰った。心して日本の家に合う様に小さ目の物を選んだつもりであったのだが、日本に帰って荷物を紐解けば.、日本の家屋にはどれも大き過ぎて飾る場所が無かった。そんな苦い経験があるので、インドネシア駐在の時には敢えて家に飾るような物は自分では買わない様にしていた。ところが帰国も間近になった頃、ジャカルタのギャラリーで小さなレリーフを見付けてしまった。一枚の木を削って重厚な奥行きを表す絵画的なレリーフは、インドネシアの伝統芸術である。ラーマーヤナを題材にしたと思われる、インドの匂いがする構図で、多数の人物や象、木々に到るまでその精緻な彫刻は何とも見事なものである。大きさも程よいので、それまでずっと自重していたのに、駐在記念に結局は買ってしまった。
 このレリーフは日本に持って帰って自宅に飾りたかったが、実は大きさは程良いのだが目方が大層重い。壁に余程太いネジを植えないと到底飾れない代物であった。そんなネジを借家に植えるのには気が引けて、遂にこの11年間は一度も飾る機会を得なかった。ところが今般転居する事にしたフラットには何とピクチャーレールがついている。天井に張り付けたレールに、カーテンレール宜しく25㎏耐荷重のフックが並んでいる。このフックにワイヤーで直接吊るせば今度こそはレリーフが飾れる、と言う事で買い物に出掛けた次第である。引っ越しまでには未だ少し間があるが、これで一つ念願が叶う。帰宅してから、まさかひび割れたりでもしていないだろうかと急に心配になり、11年振りに梱包を解いたところひび割れはなかったけれど、色がだいぶ深くなっているのと、少々ながら大鋸屑の様な物がボロボロと落ちている。レリーフの部分は特にダメージを受けている様には見えないのだが、虫か、或いは何かインチキを掴まされたのかも知れない。一度天井からぶら下げて、じっくりと観察して見る必要がありそうである。
 その東急ハンズでは、今日はやたらに横文字の会話が目立った。外国人の家族連れが沢山来ているのである。ハンズでこれほど大勢の外国人とすれ違ったのは初めての経験であった。これも円高是正の影響であろう。意匠を凝らした品々が豊富に並んでいるDIY店はそう多くはないから、売り場を見て歩いていると飽きる事がないのに洋の東西はないのであろう。そこへもってきて値段が自国通貨に換算すると、この4-5か月で15%以上も自動的に値下がりしてしまった訳だから、何か欲しい物があれば今がチャンスと思うのは当然である。何にせよ、賑やかなのは結構な事である。
 ところで如何にも肌に合わない渋谷を、今日もまた実感してしまった。ハンズを後にして井の頭通りの一方通行を走り出し、幾つ目かの交差点で、こちらが青信号なのでそのまま直進しようとしたら、三人連れの若い女性が歩行者信号が赤のまま聊かの躊躇もなく横断歩道へ飛び出してきた。信号があることなど全く無視して、左右を見るでもなく、お喋りしながら突然飛び出して来たのである。身形、服装からは日本人と思われる。狭い道なので徐行していた事もあり、間一髪こちらが停車したから事なきを得たが、あれで止まり損なってハネでもしたら悪いのはこっちなのである。しかも僕が急停車した事にすら気付かぬ風で、三人連れはお喋りをしながらそのまま行ってしまった。これだから渋谷は嫌いなのである。