baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 インドネシア旅行記(6) 〜 タナトラジャ (2)

 タナトラジャの人は葬儀の為に生きているのではないかと思われるぐらい、葬儀に重きを置く。誰かが亡くなると、一族郎党全てが揃うまでは葬儀を執り行わないそうである。一族の誰かが海外に移住でもしていると、彼等が故郷に戻れるまで1年でも2年でも葬儀を執り行わずに待っている。その間は昨日の写真のように、家族が添い寝をし食事を供える。葬儀が終わるまでは故人の魂はまだ遺体の周りにまとわりついているという信仰による。
 そして葬儀には最低80頭の水牛を潰さなければならないそうだ。幾ら安くても80頭の水牛の値段は馬鹿にならない。恐らく当時で120万円位だったと思う。勿論故人の出た家だけで負担できる事は稀なので、これも一族郎党がお金を出し合い水牛を屠る。しかし大家族なので、しょっちゅう葬儀が出るから出費も大変である。金持ちは80頭どころではない。僕が訪問した直前に葬儀を出した資産家の女性に話を聞いたが、163頭潰したと自慢していた。ご主人の為に163頭もの水牛を潰して近隣に肉を配ったのである。

(水牛は一番需要の高い商品である)

 水牛を最低80頭潰す資金が準備でき、一族郎党が全て揃うといよいよ葬儀である。タナトラジャの風葬は村によって埋葬の仕方が異なる。ある村では洞窟に遺体を放り込む。ある村では崖に穴を穿って棺桶を差し込む。ある村では故人の人形を作って、人形を飾り遺体はその飾り台の下の墓穴に安置する。

         

 入口の狭い洞窟に四つん這いになって潜り込むと突然目の前に髑髏が並んでいたりするので、あまり心臓に良い観光ではない。しかし、これ程のカルチャーショックを受ける経験もそうはなかろう。もう一度行きたいか、と訊かれれば僕はお断りするが、しかし同じ人間でも文化伝統によりここまで慣習が異なると言う事が実感できたと言う意味では、掛け値なしに良い経験であった。