baiksajaの日記

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 インドネシア旅行記(10) 〜 ボゴール

 ボゴールはジャカルタから南に60kmほど行ったところにある、急坂の多い瀟洒な避暑地である。国立農業大学がある学園都市でもある。近くにある3000m級の大山(Gunung Gede)の懐に抱かれているので昼間でも涼しい、緑深い都市だ。バンドンに行くのに昔はここを抜けて、プンチャックという一面茶畑の峠を越えて行ったものである。プンチャックはつづら折れの道が続くのでバイクで走っても楽しいが、高速を使えないインドネシアではそこまでバイクで行くだけでもう顔が煤けて真っ黒になる。ボゴールでもジャカルタから見れば随分涼しいが、そこから更に峠を登るプンチャック、インドネシア語で正しく峠の頂という意、は車から降りると思わず震え上がるほど寒い。
 ボゴールで有名な場所としては先ず熱帯植物園が挙げられる。良く手入れされた広大な園内には様々な熱帯植物が植えられている。

 園内には日本の公園と同様、休みになると家族連れがピクニックにやって来る。羽を広げると2mもあろうかという大蝙蝠を見世物にしている男もいる。そしてここには、地上最大の花を咲かせるラフレシアもある。ラフレシアの花は3年に一度位しか咲かず、しかも1日咲くと萎れてしまうので満開の花を見るのは至難なのだが、満開の時には高さ3mにも達する大輪の花が咲くそうだ。この植物は捕食植物で、花から腐臭を発して虫を誘き寄せて捕食するので、その豪華な姿に似合わず酷い臭いを発する。僕はある年にラフレシアが咲いたというニュースを聞き付け、翌日の午前中に飛んでいったのだがもう花は茶色く萎れ、先端が折れてしまっていたので高さも僕より少し高い程度、2m位になっていた。にも拘わらず未だ腐臭だけは残していた。
 この熱帯植物園に隣接して建っているのが、これも極めて瀟洒なボゴール宮殿である。初代のスカルノ大統領は二代目大統領のスハルトのクーデターにより実権を剥奪されてからは、死ぬまでここに幽閉されていたと聞く。近年では時々APECだとかアジア・アフリカ会議などの国際会議に使われている。

 ボゴールで涼しい週末を過ごした翌朝6時位にジャカルタに戻るべく高速に乗ると、高速道路が延々と緩い下り坂に差し掛かった辺りの正面に、高々と聳え立つ山並みが見える。この景色がいかにもスイスを彷彿とさせる山岳景色で、僕が大好きなインドネシアの景色の一つである。残念ながらプンチャックの茶畑と、萎れたラフレシア、それにこの山岳景色の写真が見当たらない。