baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 インドネシア近況

 夕べからまたジャカルタに二日の予定で出張している。雨季の最盛期で天気は悪いが、お陰でそれほど暑くはない。毎年2月にはジャカルタが洪水に見舞われるのだが、今は未だそれほどの雨ではない。一ヶ月ぶりに耳にするアザン(イスラム寺院から礼拝の時間毎に聞こえてくる礼拝へのいざない)の声が耳に心地よい。
 こちらでは相変わらずセンチュリー銀行のスキャンダルで喧しい。国会の特別委員会が聴聞会をしていて、テレビではライヴ中継を流している。副大統領や大統領側近の閣僚も国会に証人喚問されており、日本の国会よりも遥かに迫力があるしある意味開かれている。日本の国会の政治資金スキャンダルでは野党側には全く鋭さが無いし証人喚問する請求出来ない。答弁する与党側はカセットテープを流しているように誠意のカケラもない同じ回答の繰り返しで、証人喚問など端から受け付けない。口だけは国民、国民と言いながらその実まるで国民無視の国会だが、こちらでは質疑に結構熱くなったりしていて臨場感がある。
 ユドヨノ大統領も今回はこのスキャンダルですっかりミソを付けてしまい、昨年8月に二期目の大統領選に直接選挙で選ばれた時の支持率が何と95%もあったのに、今は75%にまで落ち込んでいるそうだ。それでもまだ75%という高支持率なのは、数字自体の信憑性はさて置いて、当地では金に纏わるスキャンダルは日常茶飯事なので、他のスキャンダルに比べればまだ増しだという受け止め方と、相対的にスハルトやハビビ、メガワティに比べればまだ増しだ、という受け止め方が未だ支配的だからであろう。しかし、清潔なイメージのあったユドヨノに対する期待は急速に萎んでいる。有力な対抗馬がいれば政権も危ういぐらい人気は凋落している。そういう意味ではインドネシアのユドヨノ支持者の方が日本の民主党支持者より余程覚めているのかも知れない。
 センチュリー銀行に纏わる大統領絡みのスキャンダルは相変わらずホットであるが、昨年末に本ブログに書いた医療ミスに関わる民衆パワーの話はもうすっかり陰を潜めてしまった。インドネシア人も日本人同様熱しやすく冷めやすい。
 極く最近バリでATM詐欺があったという。ちょっと前に日本でもあった、ゴルフ場の貸金庫とATMでの手口の折衷のような手口なのだが、ATMのカードの入り口にスキミングの器械を一見分からないように巧妙に取り付け、小型カメラで上から盗み見してパスワードを盗み、ATM利用者がキャッシュを引き出した途端に磁気テープに記録されている情報と盗み見たパスワードを使って、限度額一杯の金をインターネット・バンキングか何かで第三の口座に送金する手口だそうだ。だから口座に残額がある程度ないと意味がないので、米国人などの外国人が被害にあっている。国営最大の銀行Mandiriや民間最大の銀行BCA等のATMが狙われたそうだ。送金先の口座からまた直ぐに複雑に何度も送金を繰り返して、追跡が困難になっているとの事。日本ですらオレオレ詐欺が中々捕まらないのだから、当地では未だ十分逃げ切れる見込みのある手口なのであろう。当分バリでATMを使うときは、カメラは簡単には見付けられないだろうから、カードの差込口に変わった事はないか注意する必要がありそうだ。僕はこの頃は円やドルを現金で持ち込んで両替えすることがなくなり、代わりにATMでクレジットカードのキャッシングをしているので、気をつけないと正に狙われそうなカモである。
 経済には益々活気を感じる。また新しい大きなモールが出来ているのに気付いた。フランスのカリフールが入っているらしい、大きなモールである。先日の日本の新聞に出ていた海外での日本車の販売台数では、アセアンでは依然としてタイが一位だが、極めて僅差の53万台位でインドネシアが二位に付けていたと記憶する。1998年には40万台突破と言われていたのだが折からの通貨危機で経済が停滞してしまい、それから12年たってやっとここまで回復したという事だ。失われた10年であったとも言えるが、ここ2-3年のインドネシアの好況は目を見張る。中間所得層が確実に増えていて、家の購入と車の購入が殊の外堅調であるようだ。
 ショックだったのは駐在時代に極めて懇意にしていたトヨタ自動車やホンダ二輪車の合弁相手の会社の社長が数日前に急逝していたことだ。能力的にも人間的にも素晴らしい男の夭逝だったので本当に残念である。二週間ほど前にも懇意だった友人の息子が40歳で病死したばかりである。何れのケースも不治の病という訳ではない。経済の発展とは裏腹に、医療はまだまだ水準が低く、日本では簡単に死なない病気でいとも簡単に死んでしまう。特に、病因の特定を含め初期の救急治療が極めてレベルが低いように思える。残念な事である。