baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 出口のない迷路に迷い込んだ民主政権

 普天間基地の移転問題で、なんの展望も具体的な方向性も無いまま5月までの決着を唱え続ける鳩山総理は、心底図々しいのか単なる楽天家なのか超弩級の蒙昧なのか良く分からない。何の見通しも着地点も持たないまま政府間合意の見直しを公言し、オバマ大統領をも甘言で騙し、時間稼ぎを続けている間に名護市長選で辺野古への移転反対派が当選してしまった。5月までにどういう結論を出し、その結論をどういうスケジュールで具体化して行く積りなのか。総理は未だに一般論に終始し、あらゆる可能性を検討しなければいけないし沖縄県民の声も聞かなければならない、などと八方美人の言葉ばかり繰り返して一向に方向性を示せないでいるのだから恐らく未だに何ら具体的なアイディアは持っていないと思われる。本件はゴミ償却場と同様、誰でも自分の近くには来ないで欲しいと願っているのだから元々移転の受け入れ先が簡単に見つかるはずはない。それが残り4ヶ月に迫る今に至るも具体的なアイディアが出ていない現状では5月中に決着を付けるのは無理であろう。一体米国にはどう説明する積りなのか。同じ日本人として、余り大恥はかいてほしくないのだが。
 業を煮やした平野官房長官が年初に普天間問題は自分に任せろと総理に迫ったそうだが、これも張り切りすぎで空回りし始めているように見える。もっとも平野長官の言っている事は極めてまともで、むしろ本件のように難しく複雑な問題はこの位強引にやらなければ何事も決められない。口ばかりの八方美人には絶対に纏められないのだから、平野長官にはむしろ声援を送りたい。ただ、願わくばもう少し政治家らしく上手に立ち回って欲しいものだ。
 一方で名護市長選で辺野古移転反対派が当選した事で、社民党国民新党の泡沫政党が益々声高に県外移転を主張している。日本の国防という根本的な問題に確たる解答がないまま沖縄県民の人気取りに走る無責任な主張である。中でも社民党などは歴史的には日本を中国に売り飛ばしても良いと思っていた政党の流れを汲む訳だから、その本心が実際は何処にあるのかは分からない。耳心地が良いだけに安易に同調することなく、殊の外注意してその本心を掴まねばならない。例えばグァム移転などは、アメリカが本気で怒って実行してしまったら東アジアのパワーバランスは完全に狂ってしまい、日本がそれ以降の莫大な国防費を負担するか、東アジアが中国やロシアに席巻されて日本や韓国、増してや台湾がこれらの覇権に呑み込まれてしまう事になるであろう。
 フィリピンのアキノ政権時代にクラーク空軍基地スービック海軍基地から撤退を迫られたアメリカが本当に撤退してしまったが為に、黄海東シナ海で中国海軍が俄かに積極的に活動を初め、また露骨に尖閣諸島の囲い込みを始めたが為に一気に関係国間の緊張が高まっている。理屈抜きに武装反対の日本人には中々パワーバランスの重要性が実感されないようだが、地政学的に極めて重要な沖縄地域から米軍が撤退したら、その後の勢力地図は想像も付かない事になる。北方領土もさることながら、竹島や沖の鳥島で日本がボコボコにやられるかも知れない。しかも一旦そうなってからではもう間に合わない。
 と、色々不安なのだが、恐らく普天間基地の移転は当分無理であろう。今や、現状維持が望みうる最善策になってしまったのではなかろうか。そして普天間周辺の住宅密集地で万が一航空機事故が起きても米国は民主党政権に責任を帰するであろう。実際米国にしてみれば、普天間基地が移転できなかったのは二国間合意を一方的に破棄した民主政権の責任なのだから当然の事である。それにしても日本の平和ボケは既に病膏盲に入っており、総理大臣が本気で「友愛」を旗印に外交をしようと言うぐらい能天気な国になってしまったのだから危うい事この上ない。お互いに生き馬の目を抜かんと虎視眈々としている外交の場に「友愛」などと場違いな言葉を吐きながら能天気なボンボンが登場した訳である。
 米国との関係で言えば、沖縄返還に絡む日米間の密約が表に出た。確かに国民に知らされていない密約があるというのは良くない。そういう意味で民主党が密約を表に出すとしたのは別に悪いことではないと思うのだが、既に米国でこの外交文書が公開されていて密約が密約ではなくなってから敢えて騒ぎ立てる本心が良く分からない。これも普天間基地移設の見直しと同様、落とし処がないまま手を振り上げてしまったように思う。有事の核兵器の持込みを認めているのだから、これを国民に問えば賛成が得られる筈が無い。かといって国の防衛を他国に委ねている日本に、核の抑止力は認めないとしながら米国青年の血で日本を守ってもらう事などこれまた出来る筈が無い。民主党はこの問題を一体どうしようとしているのか、単なる正義漢気取りの自己満足なのか。
 とにかく民主党の外交は危うくて見るに耐えないが、内政でも中長期的な経済対策のビジョンが無きまま取り敢えずのバラ撒き政策に走った顛末はS&Pによる国債の格付け下方修正である。何れこうなるであろう事を僕は以前本ブログに書いているが、その結果は日本企業や銀行の資金コストの上昇である。そんな基本的な事でも、格付け下方修正と聞いて直ぐにピンと来る民主党議員は殆どいないと思うが、格付けが企業活動の資金コストに及ぼす影響は大きいのである。
 民主党政権が発足して既に4ヶ月、蜜月の100日もとうに過ぎたが理想主義に走る政策に拘る反面、地に足のついた確たる政策が見えないまま実際の政策運営では迷走の連続である。権力の二重構造や、代表と幹事長というNo.1とNo.2の政治資金問題も重なり、日本の明るい将来が全く見えないのは困ったものである。