baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 困難な債権回収

 法務省債権回収会社の監査をこの4月から強化するとの事である。何でも民衆の味方のような顔をして集票に躍起の民主党政権にしてさもありなんだが、債務者の保護が行き過ぎるのはモラルハザードを招くだけであると危惧する。勿論、闇金融のように債務者の弱みにつけこんで法外な金利を課したりするのはどんどん取り締まったら良い。しかし通常の債務に対する確信犯的な不払いは、多少荒っぽい手口でも使わないと債権回収は不可能だと思うのだ。
 以前、脱サラで会社を興し、山っ気たっぷりに大きな仕事を手掛けた挙句に失敗して倒産し、どうなるかと思ったらオーナーが自己破産して大した社会的制裁も受けずに逃げ遂せたケースを目の当たりにした事がある。偽装離婚したりいろいろと巧妙なタクティックスを駆使して実損を最小にして乗り切った彼は、「自己破産すれば多少世間体は悪いし家屋敷も表向きは無くなるけれども、命までは取られないしまぁ何とかなるものですよ」と涼しい顔で、自己破産の手続きが進行中にもう海外で新しい仕事の営業をしていた。その生命力と無責任さには開いた口が塞がらなかった。何でも儲かる事はやればやり得という哲学が何とも鼻についた。
 前に本ブログでも、インドネシアの華僑やインド人の確信犯的な債務踏み倒しの話をちょっと書いたが(2009年11月5日)僕はその債権回収で本当に苦労した。入社した当時に、尾張一宮泉州売掛金の回収ができたら営業として一人前、と教えられたが、尾張一宮泉州の商人は言を左右にして中々払ってくれないが最後は払ってくれる。簡単に払ってくれないだけで、踏み倒す訳ではない。しかし確信犯の債務者は踏み倒す気なのである。未だ僕が若い頃に、フィリピンで債権回収に某会社のオーナーの所に押し掛けて返済を督促し、のらりくらりの返答に詰問を続けたらやおら机の引き出しからピストルが出てきて「いい加減にしろ、俺は金がないと言ってるだろう」と言われた事がある。それでも若かった僕は一層言い募って結局全額回収したのだが、後から考えるとあの時に一巻の終わりだったかも知れない。悪質な債権回収にはその位の覚悟がいる。
 大体人たるもの借金をしたら返すのが当たり前である。返せない程の借金をするのは、自己責任でありその結果は当人が責任を取るしかない。なかなか払ってくれなければ勤め先にも押し掛けようしファックスも送るだろう。多少社会的制裁という圧力も必要だと思う。そもそも銀行や貸金業者が安く転売するような債権にろくな物がある訳がない。ところが4月からは債権回収会社は勤め先に押し掛けたり、勤め先にファックスを送ったり電話してもいけないらしい。そんな悪質な債務者を一方的に保護してどうするつもりであろう。債務者は益々図に乗って借金を増やすだけではなかろうか。民主党も官僚も債権回収の難しさを知らないものと思われる。
 昔は手形の不渡りなどで、債務者の子供が学校の行き帰りに車にはねられたり、家にヤクザが押し掛けて家族が恐怖におののいたりするのは珍しい話ではなかった。流石にそこまでやるのは宜しくないと僕も思うが、一方で確信犯的な、言って見れば泥棒と同類の債務者まで過剰に保護するのには反対である。借金と言うのは自分で返せる範囲で自分の責任で借り入れ、自分の責任で約定通り返すべきものである。止むを得ぬ事情で返済に支障が生じても、借り手に悪意がなければ通常は貸し手は返済スケジュールの見直しなどをして極力不良債権にはしないように努力するものである。
 それでも埒が明かずに債権回収業者に安値転売されるような債権はもう紛れもない不良債権であり、債務者も不良債務者と言って間違いなかろう。そんな不良債務者まで保護する必要はない。不良債務者からの回収率が落ちれば、何れは優良債務者のコストに跳ね返ってくるのは自明である。借りて踏み倒せれば踏み倒し得、というような債務者には厳しく、時には法律ぎりぎりの強迫だって構わないと思う。そんな人種に法廷闘争までの手間暇コストを掛ける必要はなかろう。盗人と同じ人種には、盗人と同じ仕打ちが必要だと思う。イスラム法のシャリアーなら両手と舌ぐらいはちょん切られる話なのだ。