baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 国内空洞化の進む日本経済

 ここ一週間程の新聞を読むと、国内製造業の海外進出や拠点拡大の話が目白押しである。僕がインドネシアに出張していた僅か一週間の間の記事だけである。
 富士電機がマレーシアに磁気ディスク増産の為の新工場を建設、村田製作所コンデンサー等の基幹部品の国内の製造設備を中国やマレーシアに移設、アルバックは中国に発光ダイオード製造工場を建設、コニカミノルタはマレーシアのガラス製HD基板製造を倍増、HOYAはフィリピンにやはりガラス製HD基板製造の新工場を建設、大陽日酸は米国の子会社を通じてインドのガス充填会社を買収、キングやプラスの文房具メーカーはベトナムの生産拠点を強化して新興国での販売拡大、大塚製薬インドネシアに清涼飲料製造の新工場を建設、等々である。また日産がマーチをタイで製造して日本に輸入するのに続き、ホンダや三菱もタイを拠点にアジアや豪州市場での販売拡大を狙うらしい。見落としや全国紙に載らないニュースは膨大な量だと思われ、これらは氷山の一角に過ぎないであろう。
 他方、海外からの投資が次々に撤退する。小売業のフランスのカルフールがイオンとの提携を解消、同じくフランスのミシュランが群馬のタイヤ工場を閉鎖する一方で中国生産を増強する。その他生保やファッション、等々続々と撤退し、2009年の対日直接投資は前年比半分以下に下がっていると言う。米国の企業コンサルタント会社の調査では日本の投資魅力度は既にトップ25から外れた、欄外だそうである。
 勿論、中期的には人口減少傾向にある日本の国内市場に大きな成長は見込めないし、他方中国やアジア、インド、ブラジルなどの新興国の市場は急拡大しているから市場に近い処に生産拠点を置くのは或る意味で自然の流れである。しかし国内の投資が一向に話題にならない中で僅か一週間のあいだに上の様に海外投資案件が次々にニュースになるようでは、どう考えてもバランスが悪い。実際、人件費の安い海外の生産を増やすのは一見経済原理に合うように見えるが、実はコストは人件費だけではないから必ずしも計算通りに安く製造出来る訳ではない。しかも新興国では人事管理をはじめ、品質管理、ロジスティックスなど総合的な工場運営は並大抵ではない。更に、新製品や新技術の開発は新興国では難しい。これらのハンディがあるにも拘わらずこれだけ海外に製造拠点をシフトするという事は、国内には本当に魅力がなくなっている証左である。
 案の定国内の就職戦線は氷河期と言われた2000年をも下回り、今春卒業予定の大学生の就職内定率は僅かに80%と、文部科学省厚生労働省の調査開始以来最悪だそうである。製造業の海外シフトと決して無関係ではないであろう。更にハローワークの失業給付率は6年ぶりの高水準という。新卒の就職難のみならず、リストラや早期退職などで失職した人が増えているという事だ。そんな中で政府は「労働者派遣法改正案」を策定中で近々閣議決定する予定と言う。登録型の派遣規制や製造業での派遣受け入れ規制は、益々企業が人を雇えなくなる政策である。政府は国債を大盤振る舞いで発行して将来の働き手にツケを回しているが、そのツケを払う働き手には働きたくても職がない。財政健全化が急務なのに未だ絞れると乾き切った雑巾を絞りながら、高速道路無料化や財源もない子供手当全額支給などとバラ捲き政策に拘り続ける民主党政権は、もっと根本的な経済政策を早く打ち出して雇用拡大、国内投資拡大を早急に図るべきなのだ。
 現政権は社会主義的な色合いの濃い政権であるから、どうしても大企業への当たりが厳しいが、少なくとも日本の経済を支えてきているのは企業、とりわけ大企業である。この大企業が国内で儲かるようにしないと、海外に製造設備を移設して益々国内の雇用が減ってしまう。また国内の中小企業もやって行けなくなる。中小企業が今本当に必要としているのは、国民新党が声高に実現した目先の債務返済猶予ではなく、注文なのである。
 法人税減税の話がやっと首相の口からも出るようになった。一時的には税収が落ち込むかも知れないが、中長期的には必ず日本経済の発展に繋がる筈だ。その辺りのシュミレーションをしっかりやり、期待できる雇用増や給与増、海外からの投資増を国民に示して理解を得、早く実行すべきである。規制緩和もしかりである。更には一見労働者の味方のような顔をして、その実雇用の機会を減らすような労働者派遣法改正は如何なものか。とにかく雇用を増やし、多少なりとも給与を右肩上がりにし、国内市場に活気を呼び戻す必要がある。早く日本を、国内の企業にも海外の投資家にも魅力的な市場にしなければ悪循環は止まらない。