baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 沖縄返還と密約

 昨日民主党政権は着地点無きままの暴走と書いたが、日米間の外交密約の暴露にも同じ性向が認められる。外交に密約が伴わない筈はないし、特に安全保障上の問題については国民に知らせる事が出来ない事項は必ずある筈だ。国民も全てを知る必要はない。
 日常生活においても、知らない事がある方が良い事もある。例えば買い物をする時に、デパートや小売店の口銭が幾らで、仕入れが幾らかが分かってしまえば馬鹿々々しくて買い物なんか出来なくなる。昔1枚3ドル程度で日本に輸出する半袖ポロシャツを作っていたベトナムの工場で、3,800円という日本の正札を襟に付けているのを見た事がある。バーゲンセールと称して正札の値段を書き換えるにせよ、この値差は知らない方が良い。何でも知ってしまえば世の中が殺伐となる。
 戦後、沖縄が米国の領土に編入されても、敗戦国の日本には文句を言える筋合いではなかった。それを、最近明らかになってきた多少の費用負担はあったものの、原則無償で取り返し、尚且つ米国の若者に日本を防衛して貰う約束を取り付けたのだからこんなに上手い話はなかった筈だ。公平に考えれば、米国に対しては随分厚かましい話である。米国ほどお人好しではないロシアは千島は当然の如く自国領土に編入してしまい、北方四島すら未だに返還してくれない。沖縄の無償返還は、言ってみれば北方四島どころか千島の南半分の無償返還にも匹敵する快挙だったと思う。そこには当然密約もあっただろう。
 冷戦下の日本をロシアの侵略から防衛する為には核抑止力を働かせる事は当然であった。今は急速に装備の拡大と近代化を図っている中国や、何時突拍子もない事をするか分からない北朝鮮に米軍の睨みが必要である。核兵器は勿論宜しくないから、出来る事なら核保有国が一斉に「せーのっ」で廃棄してくれればそれに越した事はない。また、歴史上唯一の被爆国である日本は核兵器の悲惨さを世に訴えて核廃絶の世界を目指さなければならない。理想はそうである。が、現実には我が国の防衛に核抑止力は必要であるし、そうであれば米国の艦船や場合によっては爆撃機にすら核兵器が装備されていた事があっても不思議はない。知れば気持ちが悪いから、日本国民は知らない方が良いのである。また訊いたところで、常に真剣勝負の米軍が本当の事を教えてくれる筈もない。戦後65年間、戦闘で血を流した事のない自衛隊とは訳が違う。
 僕が問題だと思うのは、こういう密約があった事は既に米国側で古い外交文書が公開されて見付かってしまっているのに、何故今更大騒ぎをして日本側でこの密約を改めて確認したのかがさっぱり分からない事だ。民主党のパーフォーマンスである事は明らかだが、さてどうしようと言うのだろう。今更当時の政権がけしからんと言ってみたところで、役には立つまい。それでは今後は核兵器の持ち込みはないのかと詰問されても、「ない」としか答えようはなかろうが、日本の防衛を米国に一任している日本政府が幾らそんな事を言っても空々しい。
 誰が考えても外交に密約は付き物である。逆の言い方をすれば、秘密が守れない国とはまともに付き合えまい。民主党は何でも国民に公開すれば人気が上がるという計算かも知れないが、本件のように秘密を暴いてはみたものの「だから何だ?」というのはどうにも素人臭い。何事につけ民主党は未だ与党に不慣れでやる事が垢ぬけないが、既に寝た子を起こしてしまったのだからもう曖昧な発言はやめて「今後も核兵器の持ち込みはあるかも知れないが、日本政府は米国の判断に一任する」とはっきり言ってしまったらどうだろう。