baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

「潔白が証明された」と言い過ぎた小沢一郎

 東京地検特捜部が小沢一郎の不起訴を決定して以来、彼は常に「検察の長期に亘る捜査の過程で、自分の潔白は証明された。自分にはなんら疾しい事はない」と強弁し続けて来た。秘書が3人も起訴されたのだから、もう少し謙虚な物言いもあったろうに葵の御紋を貰ったとばかりに猛々しく開き直った。更なる説明責任を問う声や、幹事長の辞任が妥当とする世論調査も端から無視し続けて、強弁の傍らひたすら参院選の票集めのみに奔走してきた。メディアも国民も、検察が不起訴にしたからといって潔白が証明されたとは誰も思っていない。単に公判を維持するには物証が足りないと言う表向きの理由と、間違いなく検察官僚にも圧力が掛った結果だったのは明白であった。
 今日、検察審査会の結論が「起訴相当」と出された。流石にこの数日は小沢も神経質で、地方への選挙対策回りも控えていたらしいが、結果は小沢には残念ながら一般国民にとっては至極妥当なものとなった。これから3ヶ月以内に場合によっては小沢の喚問も含め検察は再度事件を調べ直し、改めて方針を決定することになる。起訴となれば勿論起訴、不起訴、または結論が出せない場合には再度検察審査会に諮られ、再び審査会意見が起訴相当となれば起訴されることになる。
 小沢一郎がもう少し謙虚に反応していたら、多少は同情の声も出たかもしれないが、それも権力に酔い痴れてしまった男の見損じであったろう。眼形を見損じて大石を危うくしてしまったという事か。しかし、小沢は今日の記者会見でも強気一点張りであった。もっとも、二度検察審議会に諮られた挙句の起訴となった場合には、検察官ではなく弁護士が検察官の役目を勤める事になるそうだ。そして、普段被告の弁護しか経験のない弁護士に、果たして検察官の役割をこなせるものかには当の弁護士にも戸惑いがあると聞く。どんな裁判になるのか聊か心許ない。
 今回立件されるのは、結局は秘書がやった政治資金規正法違反への共謀程度であろうから、仮に有罪になったとしても精々執行猶予付きの実刑判決が相場ではなかろうか。僕が限りなく怪しいと睨んでいる受託収賄が立件されれば面白いが、残念ながら汚職は贈賄側も罪になるから両側が結託して尻尾を出さないように周到に計画されている筈だ。ましてや水谷建設レベルならいざ知らず、大手ゼネコンなら贈賄慣れしているから余程の失敗か内部告発でもないかぎり証拠は残っていまい。小沢側とて受け取りなど出す筈もないし、現金で受け取って自宅の金庫に仕舞うだけだから、それだけなら絶対に足はつかない。
 唯一の可能性は資金洗浄の証拠を掴む事である。今回はその尻尾が出かかった。自宅にあった4億円を担保にわざわざ銀行から4億円の融資を受けると言う巧妙な資金洗浄と思われる行為をしている事だ。自分の金を使えば掛らない金利を熨斗袋に入れてわざわざ銀行に差し出す訳だから、余程の事情が無い限りは信じられない金策である。しかも今回は時系列が前後していて、資金の出所の説明がきちんとは出来ていない筈だ。更には同じ手口を90年代半ばから何度も繰り返しているというから、一つを突破口に芋蔓式にズルズルと収賄罪が立件出来れば良いのだが、現実には夢のまた夢であろう。田中角栄仕込みのしたたかな政治家が、そんな失敗をする事は期待薄である。
 小沢一郎は、今日のところは幹事長の職は続けると言っているが、今後の捜査次第では予断を許さない情勢になって来た。党内の反小沢派の声も大きくなって来よう。今後の世論調査の声も無視出来まい。国政は一顧だにせず、自己の権勢欲を満たす事と自党の票集めだけに腐心してきた金権政治家が再び羽ばたくのか、盛大な両親の法事をピークにこれから終焉するのか、目が離せない。検察の結論が丁度参院選の頃に重なるのも微妙なタイミングである。小沢の提灯持ちの興石東や原口一博が、今日はどんな顔をしているのかちょっと見たかった。