baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 ジャカルタ郊外の大変貌

 作日、インドネシアの財閥が15年位前から開発している大分譲住宅地を、それこそ8年ぶりに訪れた。分譲住宅と言っても当地では高級な分譲住宅で、広大な敷地にブロック毎に住宅デザインのテーマがあり、日本ブロックもあればアメリカ・ブロック、フランス・ブロックもありザルツブルグなどと言うネーミングのブロックもある。夫々一戸建ちの洒落たデザインの家が並んでおり、殆どの家のガレージには車が2台は納まるようになっている。広大な敷地内には小型の人口湖や遊園地、マーケットから学校、保育園まで完備されている。昔に比べると相当造成が進んで広大になっており家も増えていたが、未だ端の方では新たな造成が進んでいる。一体何処まで広がるのか見当も付かない。一戸あたりの分譲価格は、それでも土地付きで日本円で500万円から1億円位、恐らく1,000〜3,000万円位が最多価格帯であろうから日本に比べれば未だ割安である。
 しかし驚いたのは、高速の出口からこの分譲住宅地までの約8km程度の一般道の変貌振りであった。この道路は8年前にはやっと舗装が終わったか終わらないかの、片側一車線の田舎道であった。夜になれば街灯も無く真っ暗で、所々に素朴な商店の裸電球が点っている程度、それ以外は両側に雑木林か畑の連なる、お化けでも出そうな道であった。それがどうであろう、今や高速の出口から分譲住宅地の入り口まで、それこそ切れ目無く商店が続き、所々に別の住宅団地の入り口や大型モールが聳えている。各種ファーストフード店も選り取り見取りに進出している。そして道幅はと言えば片側三車線の立派な道路になっていた。
 一つには、この界隈にユドヨノ大統領が比較的最近私邸を移転したことも影響しているようではある。しかしそれは飽くまで道幅の事だけで、まさか大統領一人でこれだけの店舗やモールを支えられる訳がないのだから、やはり当地の中産階級がそれだけ増えたという証左であろう。そしてインドネシアの経済が表向きだけでなく、草の根レベルでもしっかり成長を続けていると言う事だと思う。
 僕はと言えば、知り合いが新たにこの分譲住宅地内の大型施設の中に開店したファーストフード店を覗きに行ったのだ。地元の庶民向けのレストラン、と言うよりはキオスクみたいな店で、単価は安く、それなりの簡素な食べ物である。しかし、店は質素ながらも清潔で食事は頗る美味しい。そして何よりも外国人から見たら信じられない程安い。僕はビーフカレーライスとサモサとグァバジュースを注文したのだが、牛肉を二人分入れてもらっても全部で300円程の定価なのである。そのくせ、牛肉は脂身のない柔らかいフィレが、二人分とは言え贅沢に入っている。ココナツの味が利いていて、本場のジャワカレーとは正にこれだろうと思わせる美味である。もしこれをジャカルタ市内の日本食屋で食べれば少なく見積もっても全部で1,200円から取られる内容である。感激して従業員に500円払って「とても美味しかったからおつりは不要」と言って帰って来た。従業員の、味を誉められた時の何とも嬉しそうな顔が印象的であった。
 僕はと言えば、良心的な味と内容に内心気の毒になった。こういう時には中産階級が増えたとは言え、未だ未だ貧富の格差が甚だしい事も実感するのである。遠くなければしょっちゅう行きたくなるコストパーフォーマンスの高い店だが、残念ながらジャカルタから時間が掛かりすぎて頻繁には通えない。実際、庶民には有難いファーストフード店であろうが、本当にあれで利益が出るのかなぁ?