小沢一郎の事情聴取と政倫審での弁明

　世田谷の陸山会による土地購入に関わる政治資金疑惑についての先日の検察審査会での「起訴相当」の結論を受けて、検察が小沢一郎と元秘書3人に改めて任意聴取を求めた。小沢一郎はこれで三度目の事情聴取となるが、流石にこれは断れない。断って検察が結論を出せないままに再度の検察審査会となれば、おそらく起訴は逃げ切れないであろうからである。何れにしても検察にとっても小沢一郎にとっても極めて難しい舵取りが求められる事となっている。と言うのは、幾ら改めて事情聴取をしても聴取される側はそれなりに賢い人達だから、新しい証拠や、増してや自白が出るとはまず思えない。従い、普通に行けば検察の結論は再び不起訴となってしまうであろう。
　しかし先日の検察審査会の結論が極めて厳しい「起訴相当」であったから、再び不起訴処分という回答をすれば再度検察審査会で「起訴相当」とされ、検察官が外されて弁護士による起訴という事態になる可能性が非常に高い。参院選が終わってからの結論であろうから、参院選には直接の影響は無いかも知れないが、起訴となればやはり小沢一郎にとっても民主党にとっても非常なダメージとなる。個人的には、参院選後に検察が起訴に踏み切って、裁判でダラダラと審理を重ねた挙句に結局は皆が忘れた頃に証拠不十分で無罪となるような筋書きではないかと思うのだが、何れにしても「検察が不起訴とした訳だから、無罪が証明された」とする小沢一郎の飛躍論法がそのまま通るとは誰も思っていないであろう。ましてや莫大な金額の現金を自宅の金庫に眠らせておいて、土地の購入に引っ掛けて同額を銀行から借り入れるなどという行為は、通常は元々の金が疾しい金としか考えられない。国税が涎を垂らす典型的なケースである。
　ともあれ、小沢一郎の起訴問題は多分に政治ショーであるから関係者全員にとって最も無難な処で落ち着くであろう。一般人の知らない処で色々と画策されているのは間違いないから、僕は余り興味はない。日頃官僚、官僚と虚仮にされている官僚の一翼を担う検察官僚が本気で一矢を報いれば面白いとは思うが、官僚は偉くなれば成る程政治家に頭が上がらなくなるから殆ど期待は出来ない。
　問題は政治倫理審査会での弁明である。政治倫理審査会は普通は非公開で、且つ幾ら嘘をついても偽証罪にも問われない、何の責任も伴わない密室でのセレモニーである。そんなところで身の潔白を証明したと言われても、全く信用出来ないではないか。現に民主党の内部にも、無意味なセレモニーであって国民の理解を得るには程遠いという声があると聞く。その通りである。
　小沢一郎が本当に国民に説明責任を果たす気があるのなら、やはり嘘を付けば偽証罪が適用される国会の証人喚問で、全国民の前で堂々と潔白を証明すべきではないか。本当に無罪かどうかは当人にしか分からない事だが、当人が言っている通り潔白であるのなら何を恐がる必要があるのだろう。姑息な誤魔化しはすっぱり止めて、男らしく正々堂々と身の潔白を明かせば、ひょっとすると中には信用してしまう善良な人が出て来るかも知れない。