baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 緊張高まる朝鮮半島

 朝鮮半島の緊張が高まっている。発端は韓国の哨戒艦北朝鮮が魚雷で撃沈したと米韓合同調査で断定された事にある。沈没当初から余りに急激な沈没であった事と、船体が真っ二つに破断したことから北朝鮮の攻撃説が囁かれていたが、李明博大統領は南北の緊張を避けるためにむしろ穏便な発言を続けていた。この事件についての聴聞の為に国会に喚問されていた国軍幹部が、北朝鮮の犯行を匂わせるような発言をした途端に、大統領府からのメモが渡され急に原因不明を強調した、などというニュースも流れていた。当初はその位慎重であった訳だ。
 しかし、米韓合同調査で外部からの攻撃と断定され、更に北朝鮮製の魚雷の一部が回収されてはもう庇い切れない。どうしてこういう事が起こったのかは未だ分からないのだが、哨戒艦が航行していた黄海は韓国は韓国領海と主張し、北鮮は北鮮領海と主張している海域であるから、北鮮が韓国艦の領海侵犯という理屈を言いだす可能性は大いにある。北朝鮮軍の暴走であったのか、故意の軍事的挑発であったのか。
 韓国は北朝鮮を「主敵」と位置づけ、その軍事的挑発を非難するとして国連安全保障理事会への提起を表明、これを受けて米国は一連の対北朝鮮の動きに極めて慎重な中国の説得を始めた。拒否権が発動出来る中国が同意しないと国連安保理への提起は無意味になってしまうからである。それはそれとして、近々日米韓で経済制裁を含む厳しい対北朝鮮制裁措置が取られるのは間違いなかろう。韓国は、今後如何なる領海、領空、領土侵犯に対しても即刻自衛権を発動すると言明している。一方日本は、実は出来る事は殆どない。在日朝鮮人の送金を止める、人的交流を止める、位が関の山であろう。海上封鎖は日本には出来ない。無理してやろうとすれば、武装も装甲も貧弱な海上保安庁が担当する事になるそうだから、危険だから止めた方が良い。もし北朝鮮正規軍に自国船保護と称して攻撃されでもしたら、海保の巡視船など一発で木っ端微塵になる。
 これに対し北鮮側は韓国を敵国呼ばわりし、全ての関係を断絶すると共に「戦争は望まないが、米韓が北朝鮮を挑発し制裁を加えるなら朝鮮半島統一の良いチャンスであり、戦争を厭うものではない」と国民を鼓舞しているそうだ。更に、軍部には韓国が攻撃してきたら徹底的に反撃するべし、という檄が飛んでいるとの情報もある。韓国が軍事境界線沿いに6年ぶりに設置すると言われている宣伝用の94基のスピーカーが本当に反北朝鮮情宣活動を始めたら直ちに銃撃を加えるとも公言している。韓国の発表では北朝鮮の潜水艦4隻が行方不明になったそうである。既に黄海で作戦行動についたのであろう。北朝鮮の素早い行動と、それを即座に把握している韓国、何れも臨戦態勢と言える。
 これらの動きに対し識者と称される日本の知識人の中には、北朝鮮の軍事的挑発は本気ではないから周囲が冷静な対応をすれば大事にはならない、という意見を言う人もいる。誰も本気で戦争を望んでいるとは思えないから結果としては大事に到らないかも知れないが、現在の現実はそんな呑気な状況ではないと僕は思っている。中国が参戦するとは思えないので第二次朝鮮戦争に発展する可能性は限りなく小さいが、偶発的な衝突が契機となって南北間で重火器を投入した戦闘が始まる可能性は否定できないと思うのだ。何しろ何をしでかすか分からない、且つ恫喝やはったりが常套手段である北朝鮮が相手である。はったりで上げた拳が下ろせなくて、勢いで殴ってしまうこともある。しかも北朝鮮は今権力の端境期にあり、ある意味で政権の不安定さも否定できない。一方韓国側も、これ以上犠牲者が出たら反撃せざるを得なくなる。
 万が一戦闘が起きた場合でも、在日米軍の地上部隊が投入される事になる事態は僕はあまり想定していないが、海上や空で、特に海上では在日米軍も合同出撃する事態は全く無いとは言い切れないと思う。そうなると北朝鮮には日本を攻撃する口実が出来る。命中精度はともかくテポドンが本気で本州に飛んでくるかも知れない。核兵器保有していると言われる北朝鮮である。或いは、本気で日本を撹乱する気ならテロ部隊を日本海沿岸に上陸させて、柏崎刈羽、志賀、以下島根に到る、日本海沿いに数ある原発プルトニウム原子炉のどれかを攻撃するというシナリオは誰でも考え付く事である。プロのテロリストが相手では、武装の貧弱な日本の警察では手も足も出まい。しかし、事前に余程準備していないと自衛隊には簡単に出動命令は出せない。
 残念ながら友愛外交を唱える鳩山由紀夫には、朝鮮半島の危機に全く現実味はないのだろう。その証拠に、24日に開かれた日本の安全保障会議は僅か21分で終わったそうである。普天間移設問題で連立政権すら揺らいでいる鳩山総理に、朝鮮半島の事など構っている余裕はないのかも知れないが、事は単に朝鮮半島に留まらず日本本土にも火の粉が降って来る可能性もあるのだ。勿論その可能性は未だ極めて小さいと言えるが、少なくとも仮想の話ではなく現実の話としてである。オバマ大統領は米軍に韓国軍との連携強化を命じた。日米韓で今後厳しい制裁を発動した時に、手負いの獅子の如く何をしでかすか分からない相手なのに、我が国では有事の対応策と段取りを綿密に打ち合わせた形跡は全く見られない。先週書いたばかりの事だが、危機意識が薄弱なら危機管理体制には気も及ばない、平和ボケ・シンドロームのようである。テポドン三陸沖遥か彼方の太平洋にまで届く能力がある。万が一被害が実際に起きた時に、起きてからの後手々々の対応にならないように事前に充分準備しておいて欲しいものである。僕が余りに心配性と笑うなかれ、準備怠りなくて初めて後から杞憂であったと笑えるのである。余りに能天気な政権を見ていて、心配性に陥るのは僕だけではなかろう。