baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 ジャカルタの空は青かった

 飛行機が下降し始めてベルト着用のサインが点り、ジャカルタが近付いてきた。外を見るとプラウスリブ上空である。ジャカルタの北側には無数の、と言っても実際は144らしいが、緑の樹木に覆われた小島が珊瑚礁の中に浮いている。インドネシア語プラウスリブとは、1,000の島と言う意味である。殆どが無人島で真水の出ない島も多いのだが、一部はリゾートとして開発されていてジャカルタから船が通っている。ジャカルタから近場の、しかも1〜2の例外的な島を別にすれば大きな宿泊施設もないので、何処の島に行っても余り人もおらず、エメラルド色の海と人を恐れない海の生物と珊瑚に囲まれてのんびり出来る場所である。そしてその小さな島と島の間には養殖の生簀が沢山設えられていて、小型の魚船だかプレジャーボートだかが走り回っている。
 飛行機は予定よりも30分も早く着いたので、未だ夕方で気温は高かった。しかし予想通り空気が日本ほど湿気ていないので気温ほど暑さを感じない。東京は朝の8時に家を出るときには既にかなり蒸し暑かったから、ジャカルタのほうがやはり随分と凌ぎ易い。そして、日曜日という事があるにしてもジャカルタは空が真っ青で、そこに真っ白な入道雲が聳えている。薄汚れた空の上海に一週間、そして梅雨空の蒸し暑い東京に一週間いた後の、目に染みるような青空と真っ白い雲が何とも心を和ませてくれる。
 ジャカルタでは日曜日が月に二度正午までの半日間、片側5車線の目抜き通りの約12kmの区間歩行者天国になるそうである。昔も同じ道のもっと短い区間で、日曜の早朝だけ歩行者天国だった時期があった。その頃は三々五々市民が散歩したり、隊列を組んで行進したり、若者はスケートボードローラーブレードに興じ、自転車に乗って走り回る子供がいたりと賑やかだったものである。
 今日がその日曜日だったようである。最近はクラシック自転車が沢山走っているそうで、今朝も18世紀の、未だチェーンが使われていない、前輪がやたらに大きくて後輪の小さい自転車を筆頭にクラシックな自転車が、1,000台はあろうかという普通の自転車に混じって沢山走っていたそうだ。僕はそんな自転車は絵でしか見たことがないから、是非一度見て見たいものである。
 インドネシアは永らくオランダの植民地であったから、意外と古いヨーロッパの物が入って来ており、そんな時代物の自転車があっても不思議ではない。弦楽器なども随分良いものが戦後まで残っていたと聞く。もっとも、その後外国人に殆ど買い漁られてしまったので今は良いものはもう残っていないとも聞く。そんな中で、辛うじて生き残った自転車が復活したものであろう。大木の街路樹の下をノロノロと走るクラシック自転車は、いかにも絵になりそうである。