baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 行き過ぎている電子化〜自動車

 トヨタが米国で散々叩かれ、未だに販売に悪影響が残っているリコールの原因とされた急加速問題に対して、米運輸省の高速道路交通安全局(NHTSA)が運転者による誤操作の可能性が高いと発表したそうである。トヨタは当初は自社のミスではないと主張していたが、世論に押されて結局ICチップの交換を余儀なくされ、数十万台の対象車をリコールした。この問題は第三国でも話題になり、「日本車の品質は信頼していたが、この頃はあまり安心も出来ないね」とインドネシア人に言われ返答に窮したた事がある。一般の米国人の機械に対する常識や、運転技術を信用していない僕は、当初は本当は運転者のミスではないかと疑っていたのだが、その後相次ぐリコール対象の不具合が発表されて、流石にこの時は自信が揺らいでいたので、ムニャムニャと答えるしかなかった。
 別にトヨタに義理がある訳ではないが、やはり昨今の、物作り日本の象徴的なポジションにある車の品質に問題が発生するのには、日本人として忸怩たる思いがあった。だから今回の発表には多少溜飲の下がる思いである。ところが同じ新聞に、トヨタが米国で販売したSUV23万5千台を自主改修するという記事があった。今度はエンジンを制御するCPUの不具合だと言う。リコールする程ではないので、自主改修と言う事のようだ。
 最近の色々な車関連の不具合のニュースを見ていると、トヨタに限らず何処のメーカーも圧倒的に電子制御部品の不具合が多い。知らない間にブレーキまで電子制御されていたようである。ABSではなく、ブレーキングそのものが電子制御されていたのである。今はステアリングも電子制御されていると聞く。しかもこれ等はほんの一例で、とにかく今の自動車はなんでもかでも電子制御されていて、実は運転者は虚仮の標本のように扱われているのである。僕はこれは行き過ぎだと思う。しかも電子部品のトラブルは再現性が乏しい事も多く、原因究明が極めて難しい。
 例えば、僕はオートバイを2台持っている。バイクは自動車程は電子化されていないが、それでも1台は昔ながらのキャブレター、1台は現在は自動車では当たり前になっている電子噴射、所謂FI式である。FI車は燃費も良く吹きあがりも良いのだが、偶にほんの一瞬ガスが詰まる時がある。原因は分からないし、滅多に起こらないので整備工場で相談しても原因不明である。一度など高速で100km超で走行中に突然エンストした。反射的にクラッチを切ってエンジンを再始動したのだが、1度ではエンジンが掛らずに、この時は流石に少々ヒヤッとした。100km超でエンストすると、瞬間クラッチを切ってもバイクは風圧で急減速すると同時に、トラクションが抜けるからどうしてもフラつく感じになるのである。キャブレターならこんな状態になる前に赤信号が点るから分解掃除をすれば良いのだが、FI車は3年間で僅か数回のガス詰まりだからどうして良いのか分からない。それと、都度自分で何とか対処出来ているので、それ程深刻に考えていないという事もある。
 キャブ車にはABSも付いていない。だから後輪が時々ロックしてしまう。ロックすると反射的にブレーキを緩めるのがクセになっているから、横滑りで危ない目に遭う事はないのだが、FI車のABSはやはり快適である。左様に電子制御の発達により快適に運転できるという恩恵はある。確かにあるのだが、それにしても余りに電子制御が多すぎるのは如何なものであろうか。原因不明のトラブルも増えるだろうし、何よりも運転者がますます注意散漫になり運転も下手になる。だから幾ら車の安全対策を強化しても、歩道に突っ込んで歩行者を死亡させたり、店舗に突っ込んで店内の客を死傷させる事故が後を絶たない。最近駐車場で後ろを確認せずにバックする人の何と多い事か。テレビ画面を見ながら運転しているから後ろを見ないのだが、僕には想像も付かない。画面頼みでよくも車が運転出来るものと、ただただ呆れるのみである。こういう人は知らぬ間に周囲の安全確認が散漫になっているのではなかろうか。
 自動車は凶器なのだから、運転者にはその自覚を持たせる意味でもあまり過保護にしない方が良いと思う。バイクは事故を起こせば原因の如何を問わず絶対に運転者が酷い目に遭うから、僕はバイクに乗る時は何時もかなり緊張している。注意力は普段に比べれば遥かに研ぎ澄まされている。例えば、視界の中で何かが予想外の動きをすると、すぐに動きの原因を確認するクセが付いたのはバイクに乗り始めてからである。今思えば、バイクに乗る前は全く気が付かない事の方が多かった。今は、特に横からの飛び出し、後ろからの擦り抜きには敏感に反応する。青信号の交差点でも、自然に左右確認をし、対向車線の右折車からは目を離さない。実際、それで命拾いした事も一度ならずである。
 自動車の運転者にもライダー程度の緊張感は与えた方が良いと思う。余りに快適性と安全性を追求するが余りに、運転者を怠惰にさせてしまってはいまいか。一旦電子化された制御が、今更元に戻る事はないとは分かっているのだが、運転者の負担をもう少し増やし、堅牢で、外からも分かり易いメカニカル制御をもっと見直せば、事故も車のトラブルも随分減ると思うのだ。更には認知症の高齢者が何時までも危険な運転を続ける事も減ると思うのである。いっそパワーステアリングなど禁止にしてしまえば、高齢者には気の毒だが、随分高齢者の事故は減ると思う。ついでにオートマ車も無くして、ブレーキも昔のように唯の油圧式にすればどうだろう。車が益々売れなくなる事だけは間違いあるまい。