baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 為替に泣く大手輸出企業

 今日は、僕の会社が部品の下請けをしている大手機械メーカーとの打ち合わせに出張して来た。機械は殆ど全量輸出向けである。この部品を納入させて貰うまでには1年半ほどの営業努力があったのだが、正式採用になった途端にリーマンショックで機械の受注が激減してしまい、畢竟下請け部品の受注量ものっけから当初予定の25%位でスタートした。部品の値段は当然数量と反比例する部分があるから、受注量が25%では赤字である。しかしそれも一時的なものと歯を食いしばって頑張って来た。
 今年に入り多少明るさが見えて来て、6月頃から部品の受注量にも反映しはじめ、9月納めからやっと当初予定の数量で注文が出始めた。更に、10月納期以降はもう少し増えるかも知れないと言う話だったので、やっと一息ついたばかりであった。ところが今日の打ち合わせでは、市場各に異なる担当者から出て来る言葉は、年内納期の注文は大体固まっているが、来年以降の受注については今の円高では実際に輸出出来るか不透明、と言う話ばかりである。輸出の商談では相手国の銀行から支払い保証状が出て初めて正式契約となるのだが、この支払い保証状が来ない惧れがあると言う。と言う事は、僕の会社から見れば11月納期の注文を納めてしまえば、12月からはまた元の黙阿弥になるかも知れないと言う事になる。
 契約の通貨は今は殆どが日本円だが、輸入する企業は一定の円金額の支払い保証状を銀行に出して貰う為に銀行に払い込む自国通貨の金額が、円が上がればその分当初予定していた金額より増えてしまう訳で、余り急激な円高だと予算が足りなくなったりする。今の円高の状況は正にその危機に当たる。輸入者は円が高い時に輸入決済するのを当然嫌がり、円が下がるのを待つか、或いは相対的に価格が下がる欧州製に切り替えてしまうのである。
 これを日本のメーカーの側から見れば、注文は取ったものの契約が発効しないままずるずると納期を引き延ばされたり、場合によっては契約そのものがキャンセルされてしまう。受注に到るまでの営業努力は並大抵なものではないので、その汗の結晶が単なる円高という理由でフイになってしまうのは残念極まりないのだが、現実は厳しい。そのシワ寄せは当然僕等下請けにも来る訳で、僕等にはキャンセルという事はないが折角増え始めた受注量がまた頭打ちになってしまう。
 色々なケースを想定して今後の出荷見通しを打ち合わせて帰って来たが、打ち合わせの大半は「この円高を早く何とかして欲しい」「政府は何時まで手を拱いているのか」「20日菅直人が初めて円高に関わる各省庁の問題点をヒアリングすると言うが、この1ヶ月何をしていたのか」と言う愚痴に終始した。猖獗の地に長期出張を重ね、欧米メーカーとの競合に打ち勝ち、やっとの思いで受注した契約がいとも簡単に水泡に帰してしまうという営業マンの悔しさは、野党慣れして実務経験を持たない民主党の大臣には想像も付かないのであろう。そして、我々下請け企業も歯を食いしばるばかりで一向に果実が口に入らないのである。何はともあれ、一刻も早く円高対策を打って適正水準まで戻して欲しいと言うのは、今輸出に関わっている日本人共通の悲痛な叫びである。