baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 千両役者の小沢一郎

 この頃急に小沢一郎の露出度が上がって来た。そしてテレビで最近の彼を見るにつけ、本当にこの人は千両役者だと思う。作り笑い、猫撫で声、大したものである。昨年末に「天皇のスケジュールは1ヶ月前までに申し入れなければならないというルールは誰が決めたのか、そんな法律でもあるのか」と自身の体面の為に無理を押し通そうとした時の、ヤクザのような顔とドスの利いた声は何処へ行ってしまったのか。
 そして天皇を庇い小沢に楯ついた宮内庁長官には「一官僚のくせに俺に文句を言うなら、辞表を出してから言うのが筋だ」と恫喝したものである。今になってその真意が分かった。小沢一郎にとっては、他人は恫喝するが、自分にとっての辞表は禊でも意を決した諫言でも何でもなくて、単なる次へのステップに過ぎない、国民を欺くパーフォーマンスであったのだ。辞表を出してしまえば全ては免罪となり、官僚の辞表とは天と地の違いがあったのだ。何と自分には甘い事か。そして、TPOでこうも自分の雰囲気の変わる人は、心底信用ならないと思ってしまう。
 しきりに官僚排除、政治主導と言う。政治主導に限らず、衆院選の時の民主党マニフェストにこの人が物凄く影響している事が、今更のように如実に伝わって来る。しかし、例えば政治主導はもう馬脚が現れたのではないか。今の民主党議員の無知蒙昧、不勉強、主体性の欠如では、政治主導は政治の空白になるだけである。官僚排除には未だ10年早い。官僚主導の是正は良いが、官僚との協調は不可避である。とても今の民主党議員の実力では、小沢一郎の言う政治主導の実行は不可能である。
 政治主導と言うのが、その実小沢一郎に金権を一極集中させると言う事であるなら大いに在り得る。むしろ、狙いはそこにあるのかも知れない。本年度予算編成の時に、全ての陳情は民主党の幹事長室で一括してしまい、政府の頭越しに民主党支持を交換条件に予算配分を一手に仕切った小沢幹事長の記憶は未だ新しい。あの時の甘い汁をもう一度と思っているのであれば、非常に分かり易い。100兆円になんなんとする国家予算を一手に握り、天皇をも自在に操れれば、これ程の権勢はあるまい。しかし万が一にもそうなれば、国民にとっては無知蒙昧な民主党議員による政治主導よりも遥かに始末が悪い事となる。自民党が頼りないだけに、小沢独裁が実現すれば日本は本当に瓦解してしまうかも知れないと本気で思う。
 政治とカネの問題について、菅直人をはじめ誰でも、更なる説明責任に言及する。これに対する回答は何時も同じで「逃げも隠れもしない。国会喚問も忌避しない。しかし、強制捜査権を持つ検察が既に一年以上も捜査を続けた結果不起訴処分としたのである、つまり自分は一点の濁りもない潔白が証明されたのだから、その意味を考えて欲しい」と繰り返している。とんでもない戯言である。検察は不起訴処分を決定したのは事実だが、それは潔白が証明されたからではなく、公判を維持するだけの証拠が集まらなかったという判断に過ぎない。しかも、通常ならあれだけの金額の不正疑惑であれば、自宅の家宅捜索は常識である。小沢一郎の場合であれば、東京のみならず岩手の自宅も家宅捜索するのが普通である。一般人なら絶対に家宅捜索される。しかし、今回は陸山会の事務所しか捜索を受けていない。4億円もの現金が隠してあったのは自宅の金庫であったにも拘わらずである。
 こんな、検察と時の権力者の馴れ合いもないものである。それを自身の潔白は証明されたとする図々しさは、あきれ果てる強弁である。単に限りなく疑わしいけれども罰せず、に過ぎないのである。そうであれば刑事はともかく、道義的にはまだ国民に対する説明責任が残っている事は明白である。どうして陸山会は次から次へと土地を転がしたのか、どうして不要の金を4億円も借り入れたのか、どうして時系列が整合しないのか、自身で4億円もの借り入れ契約書に署名した事は本当に覚えていないのか、どうして贈与税も払わずに何億円もの預金の名義が家族名義に変わってしまったのか、等々不審は山ほどある。
 普天間問題では、また日米合意をひっくり返すような発言をした。翌日になって菅直人に突っ込まれて引っ込めたが、本音はまたまた、ついこの間、民主党としての方向がやっと定まったばかりの懸案を蒸し返して、再び滅茶苦茶にする所存かもしれないと危惧する。もともと小沢一郎は、朝鮮半や中国大陸寄りの思想の持ち主で、畢竟反米感情の強い人である。米軍機関紙では、在日米軍の最大の敵は小沢一郎であると名指しで批判されている位である。この人が万が一にも民主党代表になったら、総理になるのか幹事長になるのかは未だ分からないが、鳩山由紀夫政権時代と同様、或いは鳩山由紀夫以上に灰汁が強い分、より深刻な日米危機が再来すると思う。
 在日米軍問題では、もともと第七艦隊があれば十分であると発言した人物である。防衛のプロであれば、第七艦隊は空軍の制空権と海兵隊の瞬発的な陸上攻撃力が備わって、初めてその能力を発揮し得ると言う事は常識である。即ち、核戦争にならない限りは第七艦隊だけで安全保障が守れる訳ではないのである。この人も鳩山由紀夫同様、安全保障については極めて無知であったのか、或いは単純な反米感情がそう言わせたのか、何れにしても対米では扇情的な、国内的には極めて無責任な思想の持ち主である。
 円高対策、景気浮揚、雇用対策については全く具体策が出て来ない。円高については、呆れる事に大手企業は心配ないとまで断言している。心配ないとはとんでもない。大手企業は今の円高では国内生産を続けるには限度があるので、止むを得ず益々海外進出や海外でのM&Aを加速させるしか生き残る方途がない。その事が現在の最大の懸念なのであるが、それが一向に分かっていない。法人税についても、日本の税率は決して高くない、と平気で嘯く。世界の平均は26%、それに対して日本は40%であるにも拘わらずである。国内の投資環境をより魅力のあるものに改善しなければ、国内投資は停滞し、国内産業の空洞化に拍車が掛り、中小・下請け企業は益々経営が悪化して、雇用環境の改善は絶望的になるという現実に対する認識は全く持っていない様である。こういう発想が、日頃僕が小沢一郎は日本の国益の事は全く考えていないと断言する所以である。
 財政再建はまだ無駄を省けば可能であるという夢物語で国民を欺き続け、マニフェストは国民に対する約束であると財源なきままにその実現に固執し、大企業への攻撃ばかりは露骨な小沢一郎である。この人は相当執念深い人なのであろう。過去に、官僚と大企業には余程煮え湯を飲まされた経験があるのだと思う。その極端な、劣等感があると感じさせる極めて感情的な反大企業、反官僚の政策は、間違いなく日本をダメにする、個人的恣意の政策であると確信する。大企業や官僚とは、協調しなければ日本は立ち行かない。小沢がダメだからと言って別に菅直人が良いとは思わないし、全く期待できない点では民主党の議員は皆同列である。しかし、中でも小沢一郎は、剛腕なだけに積極的に日本をダメにする、鳩山由紀夫以上に日本をとんでもない目に遭わせる得る政治家である。だから、代表選での小沢一郎の勝利だけは回避して欲しいと切望するのである。