baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 富沢祥也の事故死

 モトGP2で今年からフル参戦しており、初戦のカタールで優勝し、第2戦のスペインでも2位と健闘していた富沢祥也が、昨日サンマリノで決勝レース中に転倒し、搬送先の病院で死亡した。ニュースでVTRを見ただけなのだが、高速コーナーから出てきて次のコーナーへ進入する手前の、未だ加速中のポイントであった。恐らくハイサイドが起きたのであろう、大きく膨れた富沢がゼブラゾーンでバランスを崩して転倒、後続のバイクがそのまま追突して転倒、さらに後続のバイクが富沢に直接追突して転倒したように見えた。それこそ、あっと言う間の出来事であった。
 一度目の追突で富沢にバイクが当たったが、その時は富沢は未だガードの姿勢を取っていた。そこへ二台目の後続バイクが、VTRを見る限りでは丁度頭部か頸部の辺りに激突し、飛ばされた富沢は頭から着地してそのまま全く防御態勢を取らずに、人形のようにゴロゴロ転がっていたから、その時点でもう意識は無かったのであろう。200km前後の速度であろうが、最高のプロテクターを装備し、転倒の訓練を積んでいるプロライダーなので普通なら死亡する事故ではない。追突された場所が悪かったようである。因みに、ヘルメット一つ取っても、プロが使うヘルメットは値段は僕等の使う物の10倍近くするが、目方は40%位しかないので、頸骨が骨折しにくくなっている。しかもプロライダーは、頸の筋肉はレスラーやボクサー並みに鍛えると言う。僕等は高速で転倒すると、ヘルメットの重みもあって簡単に頸骨が折れるそうである。
 レースでは選手同士はお互いに信頼しながら走っているから、車間は全く取っていない。むしろスリップストリームに入って追い越しの機を伺うなど、お互いに暗黙の了解と信頼の中で走っている。だから、偶に追い抜きを掛けようとした時に悪質な進路妨害を受けたりすると、レース後に選手同士の殴り合いになったりする。一流ライダーは勿論進路妨害はするが、限度を弁えており事故に繋がる様な無茶はしない。ただ、前走車が転倒すると、これはどんなプロでも避けられない。従い、二重、三重の事故は珍しくない。しかし通常は側壁などにクラッシュしない限りは、プロライダーが死亡する事は滅多にない。彼等は上手にスライディングして、精々骨折位で直ぐに復帰してくる。ロッシだって骨折するのだ。
 僕もレース中の事故の場面は何度も見ているが、コース上で昨日の富沢の様な転がり方をするのを見るのは初めてで、非常なショックであった。我々素人が高速道路で転倒すると、恐らくあんな事になって助からないのであろう。そう言えば昨日の早朝中央高速の下り線で、左側の崖にクラッシュしたのか、ロータスの運転手がボンネットに腰から上を投げ出して、ピクリとも動かないのを高速パトロールの係員が二人で見守っていた。救急車を待っていたのであろう。僕はその脇をバイクで通り抜けたのだ。高速道路では無茶な運転は当分慎もう。クワバラ、クワバラである。
 ロッシ、ペトロサ、ロレンソ、ストーナーなどの一流ライダーが、富沢は何時も明るかった、今日は最悪の日になってしまった、と一様に偲んでいるので外国人ライダーの中にも上手く溶け込めていたのであろう。未だ19歳と言う若さなので、有為な才能を失い残念としか言い様がない。富沢とは面識は勿論ないが、ライダーの連帯感と言うのか、今日は何となく暗い気分である。