baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 インドネシア昨今

 今日からジャカルタで仕事なので、昨夕バリからジャカルタに上がってきた。昨日のバリは抜けるような青空で、海も群青色が美しく、まだまだバリに後ろ髪を惹かれたが、そうそう優雅な事を言っていられる身分でもないので、バリとは再会を約してビジネスの都市、ジャカルタに出てきた。今日は今当地をにぎわしているニュースについて少し報告しておこう。
 当地に来た時に一番騒いでいたのは、スマトラのメダンで起きた銀行強盗である。十数人の武装強盗がメダンの銀行を襲い現金を強奪、バイクに分譲して逃走した。強盗団は全員バイク用のヘルメットを被り火器で武装しており、短機関銃を持っている賊も多数いた。行内での略奪の様子からバイクに分譲しての逃走の様子まで、全て防犯ビデオに撮られていたので、当地のテレビニュースが何度も何度も同じ場面を流していた。
 警察の発表によればそのビデオから犯人グループを割り出し、翌日にアジトを急襲し3人を射殺し一人二人を逮捕したのだが残りの容疑者は補り逃がしてしまった。その数日後に、今度は強盗団がアジト襲撃の報復でメダンの警察署を襲撃、18人いた警官隊と銃撃戦になり警官を3人射殺し、警察署を破壊して逃走した。これに対して今度は警察と対テロ警察の混成部隊が別のアジトを急襲し、また3人を射殺した。しかし、残りは逃走してしまったのだか、不在だったのだか良く分からない。そうしたら今度は昨日、同じスマトラでもメダンから相当離れた西スマトラのパダンという町でATMが襲われ現金が盗まれた。警察の発表では、その手口が酷似している事から、今回のATM強盗もメダンの銀行強盗団と同じグループだとのこと。とにかく警察とテロ集団の泥仕合の様相を呈している。
 このグループは過激イスラムのテロ集団で、以前マスターマインドとして逮捕されたが裁判で証拠不十分で無罪になってしまった、バハジールという既に老齢のイスラム寄宿学校の校長が率いるグループという事である。バハジールは以前から、インドネシアよりもむしろマレーシアを拠点に東南アジア一帯のイスラム原理主義者を統合してアルカイダと連携してテロ攻撃を実行する、ジュマーイスラミアという過激派テロ集団の指導者と目されていたイスラム原理主義者である。この不穏な男がまた逮捕された。バリの爆弾テロやジャカルタの米系ホテル爆破に関与したテロ事件の首謀者が次々と射殺されている中で、その指導者が逮捕されたのは結構な事である。今度は是非有罪にまで持ち込んで欲しいものである。
 一連の銀行強盗やATM強盗は、何れもジュマーイスラミアの資金獲得が目的と見られている。実際、警察の襲撃を受けたアジトからは多数の火器や爆弾製造の材料が押収されている。当初のメダンの銀行強盗は十数人の集団だったと言う事だから、7〜8人程度を射殺や拘束した位ではまだまだ足りない。危険分子は徹底的に一掃して欲しい。
 今年はバンドン市の創立200年記念だそうである。何を持って創立日としたのか良く分からないが、オランダ人がバンドンを作ったのが200年前だと言う理屈である。この200周年を記念してバンドンで航空博覧会が開催されたのだが、その博覧会を彩るべきアクロバット軽飛行機が、24日に操縦を誤って墜落してしまった。幸いパイロット以外には負傷者はいなかったのだが、アクロバット飛行と言うことで、メディアが挙って録画していたから、急降下から背面飛行に移り地上すれすれで反転して上昇するべきところ、背面飛行がどういう理由か長すぎて高度が下がってしまい、反転の途中で左翼が地面に接触してそのまま墜落、爆発炎上するまでが仔細に録画されて、これも何度もテレビで放映されていた。パイロットはベテランのアクロバットパイロットだったようだが、重傷を負って病院に収容された。
 更に連日喧しいのが、検事総長の解任と新検事総長の任命である。本来昨年10月末の組閣の時に一緒に任命されているべき検事総長が未だ任命されておらず大統領令で前検事総長がそのまま検事総長の任についていた。ところがこれが憲法裁判所から違憲と判断され、解任通告を受けたようである。こちらは根が深くて、短期間滞在の僕には経緯が全く分からないのだが、以前から税務署マフィアと呼ばれている、汚職の巣窟の税務署と、更には同様不正が蔓延っている税関の不正が何か絡んでいるようで、当の検事総長は居座りを宣言し、一方検事総長の任命権のある大統領が煮え切らなかったので議会や法曹界、メディアを挙げての大論争になっていた。結局大統領が先週の土曜日に新しい検事総長代理を任命して、一件落着かと思いきや、何が問題なのか今日も相変わらずニュースではいろいろと議論を醸しているようである。法制度の不備、それを施行する法曹界の腐敗、関連する政治家や官僚の不正塗れ、で当地では珍しい話ではないが、相も変わらず民衆から乖離したところで同じ穴の狢の非難合戦が続いているようである。