baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 日本の農業への提言

 僕は5日前に、日本の農業は世界の農業に伍して生きて行く農業に変身しなければだめだ、という持論を書いた。その為には政府は、新しい農業の形を緊急に設計して、バラ捲きではない農業政策を確立し、国内農業を存続させながら日本全体の貿易を推進するEPAFTAを推し進めなければならないと述べた。しかし、人に理想論だけ押し付けて自分は何のアイディアも出さないと言うのは卑怯であると、忸怩たる思いもある。そこで、素人考えながらもここ数日色々考えてみた。僕は農業には本当に知見がないので、これから述べる事はひょっとすると既に言いつくされているとか、何ら斬新ではない二番、三番、四番煎じである事かも知れないが、少なくとも僕は自分で考えた提言を述べたいと思う。
 先ずは美味しい果物や野菜を作る事が初めの一歩である。国や地方自治体が率先して品種改良を重ね、日本でしか出来ない甘い、瑞々しい果物や、色も鮮やかなら形も良くて美味しい野菜を作って欲しい。そしてその種子を広く農家に頒布して欲しい。しかし大事なのは、そういう日本の技術の粋である新品種を、建て前だけではなく実質的に国外に持ち出さない管理が非常に重要であると思う。知的財産所有権を認めない国が、中国を初めまだまだある中では、お人好しにもその種子や株を自由に持ち出させるのは日本の農業を苦境に陥れる事に他ならない。しかし、そういう管理は色々と抜け道があって中々難しいと思う。そうであれば、これからは種子が取れない品種改良を目指すべきである。果物や野菜は美味しいが、そこから同種の物を再生産する手段がないような品種を開発する事は難題であろうか。これからの品種改良は是非、その方向を目指して欲しいと思う。
 美味しければ、次は食の安全である。有機栽培、無農薬栽培で育てて欲しい。これが徹底すれば絶対に海外の生産物とは一線を劃せる製品が作れると思う。これも結局は病気や害虫に強い種を作り出す品種改良に行き着くのだと思うが、とにかく安全な食べ物である事を保証できる生鮮品を市場に出す事だと思う。
 この二つが保証されれば、値段が高くても必ず購入する消費者はいる。中国産の葉菜に農薬が残留していたとか言う数年前の事件以来、少なくとも我が家の近所のスーパーからは中国産の野菜が相当姿を消した。日本人は殊の外、食の安全には敏感な証拠である。その結果産地が明記された日本産の野菜が、極端な時には中国製の二倍の値段で売られているが、それでも皆躊躇せずに買っているようである。その上味が良ければ恐るるには足らない、必ず市場はある。
 とは言え、やはり安いに越した事はないし、消費者も財布は決して楽ではないのだからコストを下げる努力を怠ってはならない。コストを下げる為の僕の提言は二点である。
 先ず、農機具である。農機具は個々の農家が購入するには高価であるが、稼働率は極めて低いのではないかと想像する。かと言って、地域の農協などで共同購入しても、同一地域では必要な時期が重なるので、同一地域の農家が農機具を共同所有するのには限度があると思う。いや、恐らく殆ど無理ではなかろうか。しかし、農機具の必要な時期は地方によりずれが出る。今週は東海地方、10日後は関東地方、その後は東北地方、と日本を縦断するスケールで考えれば十分回るのではなかろうか。もしこの想像が当たっていれば、国が農機具のリースを始めるべきである。個々の農家が稼働率の低い農機具を保有するのは、大変なコスト高に繋がると思う。しかし、国が充分な農機を保有して、天候に応じて臨機応変に地方単位で農機を融通すれば、農機具の効率は飛躍的に上がるのではなかろうか。農家は自前の農機具を購入する事無く、必要な時期に国からリースして貰えば良くなるので、相当なコストダウンになるのではないか。
 次に、土地の共同所有である。日本の農地は山間部と海との間の狭隘な土地に造成されているケースが多く、農地の形も歪なら、面積も矮小である。畢竟、農業のコスト高に繋がる。この農地を国の指導で統合して、現在の地主には持ち分を割り当てるのである。言ってみればマンションの土地の共同所有と同じ形態にするのである。そして、農地を再編して効率の良い形に作り変える。更に、統合された農地は株式会社形式で、経営者を選任し、作付についてもリスク分散を適宜図って複数の農産物を作る形態にすれば、随分コストが下がるのではなかろうか。
 株主は地主たちである。持ち分に応じた株を保有する。利益は配当という形で、株の保有数に応じて配分される。そこには、必要があれば税務上の特例を適用しても良い。一方、農業に見切りを付ける人は自分の株は第三者に売れば良い。農地の中の土地は本来は宅地としては売れないのだから、持ち分の株を売却しても地主に損は出ない筈である。税制上の保護を散々受けた農地を売って土地成金になる事の方が間違っているのだから、適正価格で農地として売却して貰えるならお互いに損得はない筈である。
 品種改良は当然として、僕は優秀品種の海外流出阻止、農機具の全国縦断方式の国によるリース制度、株式制度による農地の再編、は非常に効果が上がるのではないかと思う。農機具メーカーからは反発を喰らいそうであるが、ASEANを初め市場は未だ広く海外にあるのだから、日本という国の存続を賭けて理解して欲しい。僕の提言が正しいかどうか、既にこんなアイディアは陳腐であるかどうかは分からないが、農水省にはこういう抜本的なアイディアを国民に広く提示して欲しいのである。