baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 山梨もっと音楽を楽しむ会〜よくばりコンサート

 今日は、山梨もっと音楽を楽しむ会、と言う恐らくは非営利団体が主催する「よくばりコンサート」と言うマチネーコンサートを聴きに行った。二年前に一度、このグループのコンサートを聴きに韮崎まで行ったのだが、その時に住所と名前を書いて来たので今回また案内を頂いた。演奏者の中に僕が応援しているチェロの長明康郎がいたので、行く気になった。
 場所は中央高速の双葉SAから5分と言う。双葉にはETC出入り口が出来た。天気が崩れそうなので車にしようかバイクにしようか大分迷ったが、日曜日に双葉までわざわざ車で行く手はなかろうと、結局バイクにした。コンサート会場にヘルメットやバイクジャケットを持って行くのは気が引けるので、バニアケースの付いている1400GTRを使った。
 低く垂れこめた雲を気にしながら家を出たが、早速往きから、談合坂から笹子トンネルまで少し降られてしまった。しかし幸い、大した事もなく無事コンサート会場に着いた。ところが帰りは笹子トンネルを抜けてから調布まで、殆ど降られ続けた。特に八王子近辺では本降りに遭い、オーバーパンツを履いてから出発しなかった事を後悔した。しかし上半身は腕から肩がずぶ濡れになったが、上半身はジャケットを着ているので中までは雨が浸み込まない。一方GTRの防風効果は滅法高く、上半身でも胸から下、そしてズボンはタンクから流れ落ちる雨水が落ちて来る内股が少し濡れた以外は、裾に到るまで全く濡れずに助かった。調布を過ぎたら嘘の様に、雨は降っていなかった。家に帰ってから調べたが、ブーツも濡れていないようで、改めて愛車の防風効果に舌を巻いた。総行程245km。往きは1時間少々、帰りは2時間。帰りもそれ程混んでいた訳ではないが、中央高速の夕方の上りはとにかく早くは走れない。
 肝心のコンサートに話を戻そう。場所は”Kingswell"と言う、未だ真新しいコンサートホールであった。横にレストランも併設されていたが、僕は入らなかったので雰囲気は分からない。ホール自体は恐らく400人収容ぐらいの小ぶりなホールで、一見教会風の、木を基調にしたシックな建物である。少し広いが結婚式などにも使えそうである。そんなホールだから、コンサートが始まるまでは音響が心配であったが、狭い事もあり少なくとも僕の席では音響も案ずる事はなく、室内楽には良いホールであった。奏者はチェロは上述の長明康郎、ピアノが田尻洋一、ヴァイオリンが渡部基一という錚々たるメンバーである。
 コンサートの趣旨は知らないが、プログラムは若干ファミリーコンサート的なポピュラーな小品が多かった。それでも、休憩を挟んだ前半と後半の最後は何れもしっかりしたピアノトリオで、前半はシューマンの2番、ヘ長調、後半はメンデルスゾーンの2番、ハ短調と、聴き応えのある選曲であった。間にチェロはフォーレの「シシリアーノ」とサンサーンスの「白鳥」、ヴァイオリンはマスネの「タイスの瞑想曲」、ピアノはリストの「ラ・カンパネラ」とポピュラーな曲を混ぜ、トリオも抜粋とか小品で飽きさせないような工夫がなされていた。しかし演奏は決してそのレベルではなく、聴き応えのある名演奏だったと言える。室内楽向きな少し派手さを抑えたヴァイオリンと、何時もながら朗々と唄うチェロの弦は絶妙の掛け合いを繰り広げた。シューマンはホスト的な立場のピアノの田尻洋一に何か遠慮があるような、少しピアノを抑え過ぎの演奏であった。しかし、田尻自らがメインイベントと言っていたメンデルスゾーンでは、やっとピアノも桎梏から解き放たれた様な自己主張を始め、素晴らしい演奏を聴かせてくれた。僕の周囲の聴衆も、日頃クラシックを聴き慣れているとも思えない人も見受けられたが、誰もが音楽に引き込まれ忘我の境を彷徨っているかの様な身の入れ様であった。
 雨には降られ、フラッと行くには少し遠い処でのコンサートであったが、行って良かったと思わせる、心の籠ったコンサートで、今夜は至福の心持で一献やっている。