baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 尖閣沖中国漁船衝突

 今日は早朝のニュースから尖閣沖での中国漁船の海上保安庁巡視船への衝突事件のビデオ流出で持ちきりである。僕も終日、何度も似たようなビデオ映像をテレビで観た。何れも他愛も無い映像で、どうしてこんな映像を政府が公開しなかったのかが理解出来ない。そこまで中国に配慮し、日本が世界で誤解されるかも知れないリスクを冒しても秘匿すべき映像であったとは到底思えない。
 本件は朝から繰り返しテレビで放映され、色々な人がコメントしているので最早陳腐になっているが、僕も一言記録を残したくて敢えて書く事とした。僕は一応小型船舶操縦の免許を取っているが、そんな技能がなくてもこの映像を見る限り、中国漁船の悪辣な故意である事は明白である。先ず「よなくに」への衝突であるが、よなくにが漁船の船首を横切る形で大きく左舷側へ回転している。衝突を避けるなら漁船は当然右舷へ舵を切るしかないが、漁船も左舷側へ転舵してよなくにの後部船尾へ衝突した。明らかな故意である。しかも不思議な事に、あれだけ巡視船にダメージを与えながら漁船には損傷が認められない。漁船と言うのは表向きで、恐らくは巡視船以上に強化された、実体は特殊軍用船であるように思われる。更にその40分後の「みずき」への衝突である。この時も、並走しているみずきに、明らかに左へ転舵して後部へ衝突してきた。どちらも故意である事は航跡を見れば明らかである。こうして昨晩インターネットに公開された映像を見る限り、中国に配慮する必要など全く認められない、悪質な犯罪の現場映像と言える。
 ところで、今回のビデオ映像の流出には二つの根本的な問題があると思う。一つは言うまでも無く、国家機密の保持である。機密の入手方法がどうであれ、国家機密となったデーターが斯くも簡単に外部流出するようでは、日本の機密保持は全く信頼できない。今回の映像公開は国家機密漏洩罪など、刑事事件に発展するかも知れないが、何れにしても漏洩原因は徹底的に追及し再発を防がねばならない。折から、警視庁の極秘データーであるテロ対策資料が流失したばかりである。この一連の不祥事を厳粛に受け止めて、政府や地方自治体はデジタルデーターの管理、保管方法とそのセキュリティ対策を改めて見直し、機密保持の徹底を図る必要がある。我が国のデーター保持体制が、現在のIT技術の発達に全く追いついていない事が明白になってしまい、国際的にも恥辱にまみれる事となってしまった。
 二つ目は、こんなに事実関係が誰の目にも明白になる映像を、どうして政府が一般公開する事を逡巡したのか、という事である。国民にも、世界にも、積極的に発信すべきであった衝突原因が明白な映像である。それを訳の分からない対中配慮ばかりではっきりしないものだから、業を煮やした誰かが発信したものであろう。この事件では、そもそも船長の釈放からして誰もが釈然としない判断であった。しかも政治主導を掲げる民主政権が、中途半端な船長釈放の責任を一に那覇地検という官僚機構に丸投げで押し付けてしまった。
 ビデオ公開拒否の理屈は、当初は公判に関わる証拠という位置づけからであった。その理屈自体の是非は素人の僕には分からないが、船長を釈放してしまい、もはや事実上公判を放棄してしまったのなら、ビデオの公開を拒否する理由は無くなった筈なのだが、政府の次の理由は対中配慮であった。しかしこの理由は全く通らない。もし漁船の船長が中国の差し金でなかったのなら何ら慮る必要は無かった。邦人三人が中国の法に則って彼の地で死刑になったばかりである。逆にもし漁船の船長が、従来から僕が怪しんでいるように中国の軍人であったのなら、むしろ中国の国を挙げての無法を糾弾すべきであった。対中関係を慮って言うべき事を毅然として言わないから、ロシアにまで虚仮にされる始末である。何れにしても、民主政権の素人丸出しの外交は百害あって一利なしである事が、このビデオを見て更に明白になってしまった。
 僕は今回に限って言えば、漏洩犯人に同情的である。機密漏洩は事情の如何を問わず決して許される物ではないし、一個人の判断が国益を損なう可能性があると思えば背筋が寒くなる。それでも本件は弱腰の政府が不必要に情報を機密にしてしまい国民の知る権利を奪ったのだから、誰かが国民の知る権利を行使した言えなくもないからである。