baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 白鳳敗れる

 今日白鳳が、昨日の63連勝を最後に土をつけてしまった。相手は先場所も一瞬押し込まれた稀勢の里であった。昨日は把瑠都に負けた稀勢の里が、今日は連勝街道を驀進中の横綱を破るのだから勝負は分からない。今場所は、場所前から白鳳が双葉山の69連勝記録を破るかどうかで相撲の話題は持ちきりであった。現在の白鳳の充実ぶりと、横綱と言う地位で初日からの7日間で当たる相手の実力から考えれば、双葉山の記録の塗り替えは極めて濃厚であった。
 僕自身も、恐らく記録の更新があるだろうと予想していた。双葉山は僕が子供の頃は未だ現役の時津風親方であり、しばしば話題に出て来る力士であったから、僕には歴史上の大横綱であると同時に割合身近な元横綱でもあった。きれいな相撲、絶対に待ったをしない大横綱、と聞かされて育った。その双葉山を尊敬する白鳳も、きれいな相撲を取ると言う僕の印象は何度かこのブログに書いた。決して贔屓の相撲取りではないが、白鳳の風格や綺麗な相撲にはどこか拍手を送りたくさせるものがある。
 だから僕には場所前には結構複雑な思いがあった。端的に言えば、69連勝を破らせたい、でも破らせたくない、という二律背反の思いである。そもそも、双葉山の時代と今の相撲の連勝記録を比べる事は、全く無意味であると言う理屈がある。双葉山の頃は年に二場所、それも一場所12〜13日の興行であった。だから、双葉山は69連勝に足掛け4年の歳月を要した。しかも双葉山の時には横綱が4人もいた。それが今は年に6場所、一場所15日である。
 白鳳の63連勝は今年の初場所からの記録である。そして一人横綱である。そんな、根本の違う記録を比較しても意味がないと言う思いがある。ところが白鵬は、「自分が記録を塗り直して良いのか」と言ったり、「例え自分が記録を更新しても、双葉山関は到底越えられない」、などと殊勝な事を言うものだから何処か応援していた。何れ塗り替えられる記録なら、白鳳のようなきれいな相撲取りに塗り替えて欲しいと思ったのである。そんな矛盾を抱えている処に始まった九州場所であるが、何の事は無い、呆気なく連勝記録は止まってしまった。
 負けた後の白鳳の、何処か気の抜けた顔が気になる。一人横綱として張っていた気が、今日の一敗で抜けてしまわなければ良いが。63連勝は素晴らしい記録である。当分は、場合によっては未来永劫、抜かれない大記録である。そんな記録を樹立した白鵬は贔屓であるとないとに関わらず、押しも押されもせぬ平成の大横綱になった。未だ若いのだから、更に精進を重ね、日本人が足下にも及ばぬ大横綱になって欲しい。日本人に、忘れてしまったかのような大和魂と武士道を想い出させて欲しいのである。