baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 はやぶさの快挙

 つい先日、上野で見て来た「空と宇宙展」でのはやぶさのカプセル。本ブログに書いた通り、それ程の感慨も湧かなかった空飛ぶ円盤みたいなピカピカしたカプセル。そのカプセルから回収した微粒子1500個が、正真正銘小惑星イトカワ」由来の物であったと言う。地球から3億キロも離れたところにある、僅かに長さ535m、短径は一番太いところで294mしかないという、小さな小さな小惑星に着陸して持ち帰ったものだ。その10ミクロン程度の微粒子の持つ鉄とマグネシウムの混合比率が、地球上には見当たらない物質であったそうである。同時にイトカワ自体の外観もはっきりした。外形は球形と言う予想に反して石ころの様に歪であり、表面は吹き出物だらけだったのである。これも小惑星の形成過程を推測する貴重な手掛かりとなるのであろう。
 予定より大幅に遅れてしまい出発から7年も掛ってしまった往復60億キロもの長途の旅。そして3億キロも離れたところにあるケシ粒にも満たない小惑星からの微粒子の持ち帰り。何ともロマンに溢れている。しかも、今では誰でも知っているが、途中通信不能という最悪の事態に陥ったり、4基あるエンジンのうち3基まで故障する等々の幾多の障害に見舞われながらも、諦める事無く最後は無事にカプセル回収に成功したその粘り強さと高い技術力は、日本が世界に誇れるものである。特に、はやぶさがカプセルを切り離して大気圏に突入した時の映像は、何度見ても胸を打たれる壮絶な、美しい最後であった。潔い散り際がまた我々日本人の魂をくすぐった。大気圏突入時のカプセルの保護材は、自らが燃え、ガスとなってカプセルを保護すると言う、如何にも日本人らしい逆転の発想で安価に作られた。その結果は想定通りの大成功で、新品の様にピカピカ輝くカプセルからはとても2万度などという高温を潜りぬけて来たとは思えなかった。これらを全てひっくるめて、月以外の天体から世界で初めて物質を持ち帰った今般のはやぶさの成功は、日本人として世界に胸を張れる快挙であった。
 イトカワの微粒子を分析すれば、太陽系の惑星の生い立ちが分かるかも知れないと言う。惑星の原料は太陽の周囲にあったガスやチリで、それが何百万年もかかって小惑星になった。それからまた何億年だか掛って、その小惑星が集まって大きな、所謂惑星が出来た。惑星の生い立ちは理論的にはそんな事のようである。ところが、惑星は大きくて引力が強いので元々の物質は高温になって溶けて変質してしまっているので、元々の物質の性質が分からなくなっている。確かに地球には未だ内部に高温のマグマがある。それが、今回はやぶさが持ち帰ったイトカワ由来の物質を分析することで、従来の理論が強固に裏付けられるかも知れないし、惑星の形成された期間などもより精密に特定できるかも知れないと期待されているそうである。
 光速に近い速度で拡がり続けていると言われる宇宙の中に無数にある銀河系、その中の一つに過ぎない我々の住む銀河系の3億個とも言われる恒星の一つである太陽を周回している小さな惑星である地球。そんな、単位にもならないような小さな地球でも、海を見ればあんなに大きい。かくも雄大なスケールの宇宙の生い立ちに、はやぶさの快挙でまた一歩迫れるかも知れないと言う。正に大ロマンである。