baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 悲憤慷慨にも疲れて

 臨時国会が終わり、世間はすっかり弛んでしまった。その間も民主党は相も変わらず選挙の票集め第一義で、バラ捲き公約に拘って財源も無いのに悪足掻き、子供手当に拘り、高速無料化に拘り、農家戸別補償に拘り、そのくせ人気の落ちる増税には一切手を付けずに、票の絶対数が少ない高額所得者に的を絞って多少の穴埋めをしようとしている。僕は別に高額所得者ではないから高見の見物だが、余りにも安易な手法である。
 税制改革は長期的なビジョンもないままこれも表面だけ取り繕う最悪のシナリオで政府決定した。法案がそのまま国会を通るかは分からないが、国民に対する説明もなく行きあたりばったりの改革では評価のしようもない。法人税減税も、減税率が中途半端で、しかも長期ビジョンが無いから税収の帳尻を合わせるのに汲々として、本来の法人税減税の趣旨からは乖離している。法人税減税は日本での投資に魅力を与え、本邦企業に、更には外資に日本国内で投資させ、雇用を創出し、企業に儲けて貰って給与を上げて貰い、その結果やっと国内市場が元気になる、と言う壮大なシナリオなのだから単年度で帳尻を合わせるなどと言うレベルでは到底日本は救われない。何時も書いているように、資源のない日本では企業が海外相手に利益を上げて初めて国内経済が潤うのだから、5年、10年のスパンで見なければ効果は見えて来ない。
 相続税は、東京のような都会では固定資産の評価が高額になるのに反して、普通の家庭では流動資産がそれに見合っていないので、土地の相続が出来ずに土地が細分化されてしまい、住環境がどんどん劣悪になるのを防ごうと言う趣旨で基礎控除額が引き上げられたものと記憶する。それがまた元の黙阿弥になってしまう。土地に関わる相続税が払えずに土地を売り、その土地の売買益から多額の税金を取られた挙句に相続税で残りを持って行かれて結局手元には何も残らない、という昔の図式が蘇るのであろう。他方、土地を購入した業者は、纏めて売るには高額過ぎるので細分化してウサギ小屋を並べて分譲するか、高層住宅にして分譲するのである。その結果は、路上で悪漢に襲われて悲鳴を上げても誰も出て来てくれない東京砂漠がまた拡がる事になる。菅直人野田佳彦の器ではそれ以上は望むべくもないのだが、それにしても政策の片鱗も感じられない税制改革で、何とも情けない。
 小沢一郎は言を左右にして国会喚問から逃げまくっている。今や彼の理屈には国民の「こ」の字も出て来ない。今国会で説明しても総選挙にはメリットがない、野党は政倫審で説明しても納得しない、今はタイミングではない、と代表選の時とは随分と方向転換の詭弁を並べ立てている。ここ数ヶ月、何処の世論調査でもずっと7割台の世論が小沢の国会での説明を求めているのに、そんな世論は端から無視である。厚顔にも程があると思うのだが、そんな方便を許す民主党ももう党の形態をなしていない。民主党が政党としての存在を守ろうとするなら、もう小沢一郎には離党勧告が相応しい。それで小沢の金に涎を垂らし、尻尾を振って付いて行くような議員は一緒に切ったら良い。所詮は再選の覚束ない新人が多い筈である。それで初めて自浄と言える。鳩山由紀夫は言うまでも無く、興石、原口、樽床、松木のような取り巻きも一緒に離党するならどうぞ、と言ってみてはどうか。とにかく小沢一郎の政治倫理は国民を愚弄する許し難いものである。岡田克也が小沢に言ったように、小沢の説明責任逃避は間違いなく民主党の凋落に拍車を掛けている。
 小沢一郎の弾劾にはもう疲れてエネルギーも果てたが、税制改革は日本経済が回復し、年金、福祉、介護、医療が破綻しないような将来ビジョンをしっかり描き、真剣な議論を積み重ねた上で決めて欲しい。国民にもそれなりの説明を行い、痛みを分かち合って初めて意味がある。一番公平な消費税増税問題も素通りしてはならない。日本人は納得すれば一丸となって臥薪嘗胆の出来る民族である筈である。だからこそ欧米人を震撼させ得たのである。少なくとも、そういうDNAは受け継いでいる。もう次の選挙で再び民主党が政権を取れる筈もないのだから、選挙の票集めなどという姑息な事は考えずに、本当に日本の将来の為になる改革をして、将来に期して欲しい。或いは未だ未熟で実力が伴っていなかったと言うなら、潔く一旦政権奉還をすべきである。菅直人の悪足掻きは、日本の将来をどん底に突き落とすという意味では、鳩山由紀夫普天間移設問題に匹敵する程の負のインパクトを帯びて来ている。