baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 ダボス会議と菅直人

 菅直人が、国会の合間を縫って超過密スケジュールを強行して通称ダボス会議世界経済フォーラム年次総会に出席した。28日の夜に発ち、29日に演説をして30日に戻ると言う強行軍である。その裏には、小島順三三菱商事会長らの、世界に発信する日本でなければだめだ、という説得があったようである。世界への発信がない今の民主政権への欲求不満は勿論僕も共有している。しかし、だからと言ってただ出席すれば良いと言うものでもあるまい。場合によっては逆効果を招く事もある。今回のダボスに赴いた菅直人が正にそうであったようだ。
 ダボス会議と言えば、従前から世界の経済界のエキスパートが集まる会議として権威があり、ダボス会議に出席する事は経済界の人間にとっては一つの勲章ですらある。それだけに、集まる人々は世界の経済を左右する大物ばかりである。最近になり、少し政治的な色彩を帯びて来て、それ程経済界の通でもない政治家が利用する風潮が出て来たように思うが、しかし未だに世界の経済界重鎮の集う会である事は間違いない。だから菅直人のような経済の素人が、S&Pの格付けすら良く理解していない人間が紛れ込むのには、正直違和感がある。
 ダボス菅直人はジョージ・ソロスとも会談したと言う。ジョージ・ソロスと言えば良くも悪くも高名な投資ファンドの神様のような人物である。日本でもファンドは色々出たが、邱永漢村上世彰堀江貴文、などが結局は皆潰れたか潰されてしまった。しかしジョージ・ソロスは未だに健在である。1998年のアジア通貨危機の影の仕掛け人とも言われたが、一国の年間予算をも凌ぐ巨額な資金を瞬時に動かせる投資家であったから、あながち嘘とも断じられない。実際、アジア通貨危機に対して多少は良心の呵責があるのかどうか、今は通貨危機の最大の犠牲者であったインドネシアの森林保護に私財を投じているらしい。菅直人はその運動に協力を呼びかけられたようであるが、経済人としての器がまるで違うから、ジョージ・ソロスにしてみれば如何にも組みしやすい日本の宰相であったろう。何を言われたか知らないが、前向きに検討すると約したと言う。
 菅直人の演説は案の定、極めて評判が悪かったようである。何時ものように全く具体論がなく、抽象論に終始したらしい。それが実力だから今更地団太を踏んでも仕方がないのだが、本人が出発前に記者団に語った「経済の行き詰まり、社会の行き詰まりに日本としてどう越えようとしているのか、発信したい」と言う思惑は見事に外れたようである。そんな訳の分からない演説はしない方が増しであった。却って日本の迷走ぶりを印象付け、将来の青写真が上手く描けていない事を自ら告白したも同然である。国会の日程の合間に無理してスイスまで出掛けた挙句に、マイナス効果の演説をして帰って来たと言うのであるから情けない。
 菅直人はもう自分の政権が長くない事を悟っているのかも知れない。そこで、自分が首相でいられる間に出来る限り国際会議を経験して、思い出を作ろうとしているのかも知れない。そうであれば、国民は良い面の皮としか言い様がない。そう言えば、今までにダボス会議に出席した日本の総理大臣は菅直人で四人目だそうだが、以前の三人は何れも出席した後は短命で終わったそうである。その三人は、森喜朗福田康夫麻生太郎、である。