baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 近況・雑感

 来る日も来る日も余震が続いて、すっかり地震酔いになってしまった。それにしても今度の地震は余震が多い。昨日まででM5以上の余震が既に315回もあり、余震の続く期間も通常の一週間を遥かに超えているそうである。今まで余震が多かった十勝沖地震でも90数回だったと言うから、今度の地震震源地の広さ、そのエネルギー、そして地殻の歪の大きさが従来の地震とは桁違いのようである。
 昨日も朝から立て続けに二度も「緊急地震速報」が流れた。11日の大震災以来、緊急地震速報が出ると「何時か、何時か」と待っている間が緊張するようになってしまった。今までは半ば馬鹿にして、揺れてから考えようぐらいの傲慢な態度だったのだが、先日の震度5強を経験してからは、少し神経質になっている。昨日の昼間は外に出ていたのだが、コーヒーを買おうと並んでいたらまたメニューの看板と天井から下がっているペンダントランプがブラブラと揺れ出した。それで地震と確信したのだが、足下が揺れても地震だか錯覚だか区別が付かなくなって来た。
 今日は朝から健康診断の半日ドックであった。こんな時に呑気に人間ドックと言うのも被災地の人達に気が引けるのだが、前から予約がしてあったし、健康診断をキャンセルしても何かその変わりに役に立つようなことが出来る訳でもないので、予定通り病院に行った。病院では胃の検査の前に胃の動きを止める薬を注射される。今日の注射は血糖値を下げる副作用がある薬なので、1時間ぐらいしたら甘い物を食べるようにという注意があった。僕は大体こういう注意には滅法だらしがない。今日もそんな事は気にも掛けずに、都心に出たついでにやりたい事があったので健康診断が終わったら朝から絶食のまま歩き始めた。最近は節電の影響でどこもエスカレーターが止まっているから、随分と運動になる。地下鉄の具合の悪い場所だったのでテクテクとかなり歩いた。そうしたら何やらフラフラする。また地震かと思ったら、僕だけ転びそうになった。回りの人を見たら平気で歩いているのに、僕だけ店のウィンドーにぶつかりそうになった。生まれて初めて、低血糖でフラついたのであった。びっくりして近くのコンビニでお菓子を買って食べた。気を付けて歩いている中に、お菓子が効いてきてフラ付きは治まった。少し運動が過ぎた事もあるが、やはり病院の注意は素直に聞かなければならない歳になったようである。
 高級住宅街と昔から言われている地域を歩いていた。僕が住んでいる郊外のスーパーとは桁の違う高級品が並んでいる高級スーパーなどがある地域である。2匹のプードルを散歩させている老婦人がいた。プードルは躾けが悪く、老婦人が振り回されている。2匹が歩道一杯に拡がって止まっているので、僕が歩く処がなくて立ち止った。良く見れば2匹とも高そうな洋服を着ている。更に良く見ると、バックスキンの高級靴を履いている。プードルの様な愛玩犬が洋服を着せられているのは珍しくないが、靴を履かされているのは僕には初めてであった。高そうな、柔らかそうな革靴であったが、犬にしてみたら定めし迷惑な話であろう。洋服にしても靴にしても、動物には迷惑千万で、可愛がるというよりはむしろ虐待ではないかと思うのだが、当のご婦人は行儀の悪い犬を叱るでもなく「猫可愛がり」の体であった。
 「ボストン美術館 浮世絵名品展」と言う展覧会があり、以前から行こうと思っていた。これも震災や原発事故の最中に行くのは少し気が引けたが、ついでなので通り掛かりに立ち寄った。平日の昼間だと言うのにかなり混んでいた。良く見ると僕の様な年寄りが多い。暇な年寄りが高踏遊民化している日本の実体を厭でも再認識させられる。そして年寄りには、勿論人によるのだが、マイペースな人が多い。人にぶつかっても気付かないのか単に平気なのか、「失礼」の一言もない。絵を見ている僕の前を平気で通り抜けるどころか、僕の前で立ち止まって視界を遮っても平気の平左である。ぶつかるのは男、立ち止まるのは女が多い。周囲が静かなのにもお構いなしで、大声でしゃべっている女の二人連れもいる。僕は外に出ると何時も若い人に腹を立てていたが、とんでもない、年寄りも躾けをやり直さないといけない。或いはこんな行儀の悪い者共に育てられた若僧達が無作法なのは当然か。
 帰り道、渋谷に寄って日曜日からの出張の手土産を買った。震災の影響でデパートはすっかり人出が減ったと新聞で読んだが、もう都民はさっさと立ち直ったのか結構な人混みである。店員の手が足りずに散々待たされた挙句に、やっと買い物が出来た。通路はどこも節電で暗い。特に横断地下通路などは薄気味が悪いほど暗い。エスカレーターが止まっていて、何処も通路が薄暗いので、電力不足が身に沁みる。そして、はっと被災者に思いを馳せる。我ながら不埒である。
 帰りの郊外電車で、目の前のカップルがベタベタしている。しかもどう見ても不釣り合いなのである。男は髪は既に総白髪で歳の頃40代半ば、他方女はどう上げ底して見ても20代半ば、倍半分位の歳の差である。しかも男は相当バカ面であったから、客観的に見れば女が断然損をしている。どういう関係か、小説が書けそうなぐらいに想像力を書き立てる不釣り合いなカップルであった。それにしても良い歳をして平気で真昼間から電車の中でベタベタ出来る男は、どう贔屓目に見ても相当程度が悪いのであった。