baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 インドネシア速報

 昨日、またジャカルタに来た。飛行場ではもう放射能検査はやっていなかった。放射能漏洩問題を少し冷静に理解してくれたものか。しかし、日本食品の輸入禁止措置は相変わらず続いている。元々インドネシアで採れる生鮮食品は国産品保護の観点から輸入禁止にする事にしていたが、その実施のタイミングが原発事故と偶々重なってしまったというのが真相だそうだが、加工品の輸入禁止は明らかに放射能汚染を恐れてのものである。もっとも日本政府も国内では福島県、栃木県、茨城県の一部の野菜を出荷停止処分にしたり、茨城沖で獲れたこうなごを出荷禁止にしたりしているから、産地の位置関係が全く理解できない外国の措置としては妥当とも言える。
 しかし、インドネシア人から東電の職員が1名、被爆して死亡したというニュースが大分以前に流れたと聞いた時には唖然とした。恐らく高濃度汚染水に入って作業した作業員三名が翌日放射能被爆専門病院に入院し、うち一名が未だ症状は現れていなかったが後刻肌が赤くなるなどの軽い症状が出るかも知れない、という診断をされた事が大げさに誤報されたものであろう。福島の事故では未だ唯の一人の犠牲者も、重症者も出ていないと説明したところ、どうしてそんな嘘の報道が罷り通るのかと逆に驚いていた。
 インドネシア塩尻大使がEU大使へ栄転となり、今日帰国した。同大使は着任早々、僕の友人の演奏会でいきなりインドネシア語で挨拶をして来場者から大喝采を浴びたり、日印尼国交50周年を機に「ジャカルタ日本祭り」を恒常化させるなど、日本とインドネシアの関係強化に大変な尽力をした大使である。3年間の在任中は年に数回の友人の演奏会にも殆ど皆勤で来場し、演奏会に箔を付けると同時に友人にはその地味な活動を労って「日本人の誇りです」と賛辞を惜しまないなど、大層心配りの細やかな大使でもあった。友人は塩尻大使の転進をさぞ残念がる事であろう。
 そういう地道な努力の結果として、英国が行った世界各国の他国に対する信頼度調査では、インドネシア国民の信頼度では日本が毎年トップになっているそうである。また世界各国の日本に対する信頼度では、インドネシア人は85%の国民が日本を信頼してくれているそうで、これもインドネシアが世界で一番日本を信頼してくれている国なのだそうだ。これだけの信頼は今までの両国の色々な人の努力の積み重ねとインドネシア人の気質に負う処が大きいが、やはり最大の理由は日本がODAを主として過去ずっとインドネシアの経済発展を支援してきたからである事は論を待たない。
 こういう貴重な信頼は絶対に裏切ってはならないと思うのだが、今回の大震災に際しても、インドネシアは早々と援助の申し入れをしてくれた、ところが日本政府の無能振りは、どうでもいい事を理由にその善意を袖にしたと聞く。台湾に対しても同様であったと言う李登輝の手記を読んだが、世界130数ヶ国から援助の申し入れがあったのだから、恐らく無為無策の政府はその殆どに非礼極まりない対応をしたものであろう。善意に仇で応えるなどというのは実際国辱物である。こういう非礼を重ねる民主党政権は、幾ら国家の非常時とは言えその政権が長引けば長引くほど禍根は深くなる。増してや折角のインドネシア国民の信頼を繋ぎ止める事など望むべくもないから、手遅れにならぬ中に政権を交代させなければならないと気持ちは焦るばかりである。
 バリ島では3日前に、東日本大震災の犠牲者の冥福と被災地の復興を祈る式典が行われたと言う。バリ島では既に同様の式典が別の場所で二度行われており、今回は三度目だそうである。式典が行われた地の県知事は「今まで日本はインドネシアをずっと助けてくれた。日本人はバリの最大の友人である。その友人の困難な時に、今度は我々バリ人が出来る事をする番である」と言って皆でお祈りをしてくれたと言う。震災直後には地元民のみならず観光客からも義捐金を募る踊りの会が催され多数の踊り子が無料出演したと聞くし、バリ島でも日本人に対する暖かい思い遣りは厚いのである。