baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 ジャカルタで

 先日西ジャワのチルボンと言う街で警察に自爆テロが掛けられた。こちらに来てから連日テレビではその自爆犯の死に顔のアップと、泣いてインタビューに答える父親の姿が映されるばかりで、今日はこれと言った目新しいニュースは見当たらない。今僕がジャカルタで泊まっているホテルの位置は東経106°49’、南緯6°12’だそうである。本来なら南十字星が見える位置なのだが、南十字星は暗い星であるのに加えて、ジャカルタは空が汚くて、明るくて、とても星空が拝めるような場所ではない。南十字星など望むべくもない。
 その昔ジャワ島の西端の国立公園、ウジュン・クロンに行った時には、これが同じジャワ島かと思うほど真っ暗で、それこそ鼻を抓まれても分からない漆黒の闇の中、空を見上げれば満点の星空で5等星か6等星ぐらいまで見えたような気がする。だから星が多すぎて、しかも南十字星にはより明るいダミーがあるので、南十字星を探すのに随分と時間が掛かった事を思い出す。西カリマンタンの州都ポンティアナックでは、赤道儀を跨いで北半球と南半球を1分間に30往復した。日頃余り気にしない緯度、経度を見て、今は南半球に居る事を実感して膨らんだ連想である。
 こちらに来てから食べたくもない日本食が続いていたのだが、今日は夕食が一人になれたので、ホテルの近くのイタリアレストランに行った。歩ける距離にあるので、便利である。もっとも、ジャカルタの夜の一人歩きは慣れていないと薦められない。ジャカルタに限らず外国で、しかも慣れていない処では、夜の一人歩きが安全な場所はまずない。僕は勝手知ったるジャカルタでさえ今でも余り目立たないように、緊張して歩いている。
 そのレストランはメニューはかなり本格的なイタリアンなのだが、オーナーが日本人なので客の半分以上は日本人である。昔なじみのインドネシア人ウェイターを相手に無駄口を叩きながら一人ワインを片手に食事をしていると、日本人の団体が入って来た。8割が女性、それも全員、どこから見てもジャカルタ在住の独身ワークウーマンである。僕がジャカルタに居た頃も銀行やホテルには結構女性が現地採用で働いていたし、商社には女性の駐在員を置いている会社もあったので、その頃から独身女性が屯している事はあった。
 しかし、当時とはまるで雰囲気が違う。上手く表現できないが、当時よりも遥かに自由奔放で自立している様に見える。日本の女性は本当に国際的になったと思う。と同時に、中には随分跳ね返ったオーバーアクションで騒々しい、というか品のない人も見受けられ、新しい世代の若い人達を目の当たりにすると共に、海外の日本人の層が広がったことをもまた実感したのであった。