baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 浜岡原発の全面停止

 浜岡原発の全面停止が決まった。飛びぬけて危険な原発だったようだから、大事に到る前に停止が決まったのはひとまず結構な事である。しかし原発が本当に停止するまでには未だ相当の時間が掛るのではなかろうか。燃料棒が完全に冷え切り放射性崩壊が完全に止まるまでには、素人考えでは福島同様3年位の時間が掛るのではないかと心配になる。
 政府が異例の停止要請をするほど地震津波に対するリスクが高いのであれば、燃料棒が完全に冷え切るまでは現在工事中の12mの防潮堤の工事や、非常電源の移設工事などの災害対策は続けなくてはならないのではないか。或いは以前に本ブログで提案したような、冷却水の冷却システムが故障した時の予備システムを増設するとか、予備電源システムを単に高台に移設するのみならず大幅な能力アップを図る等の、恰も運転が続いているかの如き対策を続ける事も必要なのではないか。勿論完全停止までに間に合わない対策は続ける意味はないが、例えば防潮堤は後2年で完成すると言う話を先日聞いたばかりである。今は全面停止ばかりが話題になっているが、停止までのタイムテーブルとその間の防災対策をどうするのかは是非訊きたい処である。
 一方で、先日の菅直人の突然の中途半端な停止要請から3日も経って、仙石由人や枝野幸男の口を通してやっと少し追加の説明が為された。「当面停止要請は浜岡だけで、他の原発は考えていない」「地方自治体には補償金は従来の80%程度を払い続ける事になろう」「他の原発の被災リスクは1%程度だが、浜岡は87%と飛び抜けて高い」などの発言である。僕はこういう説明を初めからするべきであると憤慨しているのである。もっとも原発が無くなるのに補償金を払い続けるのもおかしな話で、これも何だか思い付き発言の続きのようである。卑しくも地位のある人間が発言するのだから、補償金を払い続けるのなら、どういう理由で幾ら幾らを何時まで、という説明を一緒にすべきなのである。増してや財源には一部税金も充当される筈である。
 また、代替燃料の手当てはどうするのか。化石燃料の割り当ては、今や国際政治の駆け引きに使われる政治の道具になっている。アラ石がサウジから撤退するの已む無きに到った事は未だ記憶に新しい。中部電力の会長が先週末、政府の要請を受けて直ぐにカタールに飛んだと言っていたが、交渉は上手く行ったのであろうか。何れにしても突然のLNG需要増は一私企業だけにその手当てを任せておける話ではあるまい。政府として必要に応じ全面支援する旨のコミットが必要である。全面停止の決定で政治パーフォーマンスとしては完結したかも知れないが、それだけでは余りにも無責任である。
 或いは他の原発、福島第一を除いても他の43基の原発との違いはもっと丁寧に説明すべきである。他の原発周辺の住民の不安の声が聞えて来ている。原発を抱える地方自治体の首長から不満の声が続いている。当然である。しっかり具体的な説明をしなければ、他の原発周辺住民の不安を煽るだけである。単に抽象的に、他の原発のリスクは1%程度だが云々と言われても、もっと具体的に説明して貰わなければ周辺住民に限らず、国民一般も納得出来ない。この説明は緊急を要する、政府としての責任を問われる事項である。
 奇しくも経団連の米倉会長が記者会見で言っていた。「民主党政権になってから、突然結論だけポロッと出て来る。思考過程が全くのブラックボックスである」と。表現はともかく僕も全く同意見なので、世間に影響力のある人からはっきり言って貰ってやっと少し溜飲が下がった。もっとも、思い付きには元々思考過程などは無かったのかも知れない。