baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 インドネシア雑話

 インドネシアは既に3年先の大統領選挙に向けた選挙戦が始まっている。選挙戦とは、政党や個人の資金集めであり、相手のイメージの傷付け合いである。スハルトが倒れた後、民主化が始まり大統領も国民の総選挙で選ばれるようになったのは良いが、資金集めの汚職は酷くなった。スハルトの時も大統領選挙はあったが、結果は初めから分かっていて選挙は形ばかりであった。汚職も勿論あったが、当時の汚職スハルトのコントロール下にあったから、秩序があり、相場もしっかりしていて、無闇な吹っ掛けはなかった。そして汚職からの上がりの一部は、スハルトの命令でしっかり民衆に還元されていた。
 汚職はないに越した事はないが、以前にも本ブログに書いたように、インドネシア汚職は文化だから一朝一夕に無くなる事は無い。しかもスハルトと言う箍が外れてしまったから、昨今は全く節操がない。そして汚職を取り締まる大統領特命の汚職撲滅委員会が、第二の秘密警察のように強大化してしまって、昨今はその越権行為に批判が出ているようだが、所詮その委員会の委員長が汚職で逮捕される国だから、目クソ鼻クソなのである。
 昨年来世間を賑わしていた中銀上級副総裁選出に絡む汚職事件でも19人の国会議員が逮捕され、メガワティ元大統領側近が指名手配されているが、当の副総裁はシロと裁定されたようである。ここ数日は、汚職容疑で指名手配されていた現職大統領の政党の経理担当が、政治力でとしか思えないが突然容疑者から外れたり、現職の国務大臣汚職容疑で取調べを受けたりと、相変わらず汚職絡みの事件が喧しい。何れも、個人の欲の皮が突張っている結果である事は当然だが、それに加えて大統領選挙に向けた資金集めも関係している事は想像に難くない。
 昨日、最新のインドネシアの資産家番付が新聞に載った。1位はシナール・マスという当地財閥の総帥、エカ・ウィジャヤという人で資産総額は120億ドル、2位は丁子の入ったジャルムと言うタバコで有名なタバコ会社のオーナーのブディ・ハルトノで115億ドル、3位はサリム・グループという最大財閥のオーナー、アンソニー・サリムの80億ドルとなっている。シナール・マスもサリムも日本との関係は深い。エカもアンソニーも僕は個人的に知っているが、特にアンソニーとは親しかった。僕よりも若いが、「趣味は?」と訊かれれば「仕事」と応えるほどのワークホリックである。サリム・グループとしては二代目のオーナーであるが、父親は高齢で既にインドネシアにはいない。アンソニーの父親、林紹良とエカ・ウィジャヤに共通している事は、二人とも稀代の金持ちである事と、無類の好色家である事である。
 当地の番付表には他に納税額による番付表もあるが、何れにしてもこういう場所に名前が出るのはバカ正直と言われ、何れもせっせと海外に資産を移しているから、本当のところはこの数字よりも遥かに大きな筈である。資源の豊かなインドネシアには実は億万長者はゴロゴロいて、上位150人の総資産は1,079億ドル、一人平均は何と7億2000万ドル、約590億円であり、しかも未だ相当隠されている。これほど金持ちが沢山いると言うのは、逆にお金に操られる人間も沢山いると言う事である。また、この150人の中の華僑とマレー系の比率は明かされていないが、人口に占める華僑系は3%程度と言われているのに対し、長者番付における華僑系比率は間違いなく半分以上の筈である。そこにマレー系の政治家や軍人、警察、裁判官などが中国系の贈賄漬けになっていると言う構図が出来上がり、そこに汚職の根源がある。勿論マレー系にも長者は沢山いるが、中国系ほどの際立ちはない。
 政治経済はそういう暗い影を引き摺っているが、普通の市民は生活は楽ではないが明るいもので、いつも楽しそうに振舞っている。彼等を見ていれば、やはりインドネシアは南国の楽園に見えてくるのである。
 そう言えば、以前ここに書いたジャカルタの地下鉄は着々と計画が進んでいて、2016年末頃には走り出すそうである。今度は資金も日本政府の援助が付いているから、予定通り実現するであろう。楽しみである。