baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 防犯カメラに唖然

 今日は昼から東京の西にある取引先に出掛けた。駅からほんの少し外れると、緑の多い、目の先には奥多摩の山々が迫る、ここが東京かと思うほどの長閑な立地である。小さな会社なのだが、社長の工夫で色々と行き届いた仕掛けが其処此処にある。製造ラインには勿論の事、事務所には防犯カメラのモニターがあり、カメラは正面玄関や工場の入り口、事務所内などを監視している。そして、恐らくは赤外線探知だと思うが、人が動くと自動的に記録するようになっている。
 そのカメラには当然色々映る訳だが、ある日曜日に見知らぬ老人が棒を携えて敷地内に入って来た。行く先は、相当奥まった処の工場入口に設置してある自動販売機であった。老人はやおら釣銭の出口に手を入れて釣銭の取り忘れを探り、それから棒で自動販売機の下に転がり落ちてしまったかも知れないコインを探したそうである。見た事もない顔なのだが、従業員にその顔を見せておいたら、別に敢えて探した訳ではないのだが、程なく近所を歩いているところが見付かった。そこで、勝手に工場の敷地内に入らない様にきつくお灸を据えて放免した。それで暫くは来なくなったが、最近また懲りずにやって来るそうである。釣銭泥棒のプロのようである。
 そして唖然としたのが、警察官であった。これは相当酷い話なので僕も記録してある映像の一部を見せて貰ったのだが、余りの事に唖然としてしまった。事の発端は、この会社は24時間操業で、夜間は無人に近い形で操業している。自動機の中には、何かの理由で停止すると、赤ランプが点滅する機械がある。ある晩それらの機械の1台が何かの理由で止まり、赤ランプが点滅し始めた。その時、生憎夜勤の人間がいなかった。工場は道から大分中に入っているので、普通ならそれほど気にならないと思うのだが、通行人が変だとばかりに警察に通報したそうである。
 すぐにパトカーが来て、警察官が敷地内に入った。そして工場建屋から、さらに裏手に回り、鍵を掛け忘れていた裏口から工場に侵入。その時点で、少なくとも赤ランプの点滅が分かるし、他の機械は自動運転中なのだから、異常ではないと分かる筈なのだが、更に暗闇を懐中電灯を頼りに階段を上がり品質検査や梱包の区域に侵入、それでも気が済まぬようで、今度は電気を点けて事務所にまで侵入して来た。この時には既に警察官の数は相当に増えて居り、パトカー数台が駆け付けたものと思われる。
 事務所内に侵入した警察官は5〜6名ほど、人もいないところで事務所の電気を点け、警杖を携えて机の上に広げてある書類を見たり、事務所の隅に置いてある棚を物欲しげに眺め、事務所部屋に続いている更衣室にまで入り込む。警官の顔にはもはや全く緊張感はなく、雑談したり笑ったりしている。更には無人の三階にまで立ち入り、鍵の掛っている部屋のドアをゴンゴン叩いていたと言う。
 この時点で警察からこの会社が契約している警備会社に電話が入り、外から通報があったとの連絡があった由。警備会社は直ぐに現場に急行すると共に会社の社長に電話を入れ、社長も何事かと現場へ駆け付けたところ、既に警察は帰った後であった。帰り際にも、警察は警備会社の人間には建屋内に入った事は一切話さなかったと言う。それでも幸いな事に、盗まれた物は無かったようである。
 どんな通報が入ったのかは知らないが、赤ランプが点滅しているだけの事だから、それ程大げさな通報ではなかったのではないか。従い、精々工場内に踏みこんでその赤ランプの原因を究明したら、それ以上の侵入は明らかに越権行為、否、違法行為である。仔細を見る為に録画モニターを一緒に見た社長と警備会社の社員は、余りに厚かましい警官の無法ぶりに流石に驚いたそうである。勿論その遊び半分のダレ切った警官の笑い顔と、我が物顔の事務所内の闊歩振りを見れば誰でも驚く。流石に腹に据えかねて、社長が警察に文句を言おうかと警備会社に相談したら、警察を相手に喧嘩する馬鹿はいないと窘められたそうである。
 何とも弛んだ、しかも違法行為を平然とやる警察官達には、心底不信感と不快感を抱かされた。それにしても、こんな事は例外中の例外と思いたい。僕達の知らないところで、警察が平然と不法家宅侵入をしているなどとは思いたくないものである。