baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 トトロのシュークリーム

 昨日の同窓会で、小中学校で仲の良かった友達の消息を聞いた。高校で分かれてしまい、更には就職してからはすっかり縁が遠くなってしまった友人である。彼は大手の広告会社、僕は商社だから、どちらも昔の猛烈時代では就業時間がまともではないし、人間的な生活も望むべくもない仕事に就いてしまった。たまに郊外電車の朝の混雑で一緒になるぐらいで、その後全く音信も途絶えてしまった。
 僕はヴァイオリンの他にギターも弾いたのだが、その先生は彼である。先生と言うと少し正確ではないが、彼は小学校の頃からギターが上手で、当時ヴァイオリンで伸び悩んでいた僕には衝撃的な出来事であった。幸い兄貴が買って貰ったギターが家にあったので、早速僕はギターを弾き始めた。触ってみたらこれが面白い。彼の家にしょっちゅう押し掛けては彼のコレクションのレコードを聴かせて貰い、彼の楽譜を貸して貰い、彼の演奏を聴かせて貰った。小学校6年生から中学生にかけての頃の事である。それから大学に入るまで、僕はギターに嵌っていた。
 その彼が脱サラで、近所に店を出したと昨日聞いたのである。直ぐ近くなので早速自転車で行ってみた。いかにも彼らしい、洒落た店構えのケーキ屋さん、と言うかシュークリーム屋さんであった。トトロのシュークリームを世界でここでだけ作っている。スタジオ・ジブリと独占契約したらしい。彼はすっかり白髪になり、白髭を生やして、宮崎駿そっくりである。彼も久しぶりの再会を喜んでくれて、早速来週一献やる約束をした。

 これが彼が脱サラで、毎日作っているシュークリームである。皮が独特の香ばしさで、クセになる。クリームは定番はカスタードとチョコレート、後は季節ごとに苺、桃、栗となる。僕は昨日、カスタードと桃を食べて、また今日チョコレートを買いに行ってしまった。森のおみやげと言うクッキーも売っていた。元々器用な男ではあったが、何時の間にか洒落た事を始めたものである。奥方が店番をして、オシドリ夫婦のシュークリーム屋である。それでも奥方が社長なのは、サラリーマン時代にかけた苦労へのせめてもの恩返しだろうか。