baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 なでしこジャパン、優勝!

 もう朝から日本中この話題で持ちきりだから、今更と思わぬでもないが、もう今日はこれしかなかろう。そうっ、「なでしこジャパン」がまさかの優勝を勝ち取ってしまった。だれもが「ひょっとしたら」と言う期待は持っていただろうが、大人と子供ほども体格の違うアメリカ相手にまさか本当に勝つと信じていた人はどれ程いたろうか。
 僕は3時45分にまた「おはようタイマー」をセットしてベッドに入った。ところが昨日はコパ・アメリカの準決勝、アルゼンチンvs.ウルグアイをやっていて、この試合が物凄く面白くて、結局タイマーのセットは無駄になってしまった。女子サッカーの方は、試合開始と同時に大柄の米国の選手が猛スピードでなだれ込んで来て、日本は守勢一方である。しかもスウェーデンと違い、米国の選手はスピードがある。足の早い大野、安藤、川澄、鮫島などでも互格のスピードである。しかもプレスがきつくて、お家芸のパス回しも横パスばかりで縦パスが通らない。モタモタしていると二人、三人と囲まれてボールを取られてしまう。何とか相手の隙を見付けようと回す横パスも、足の長い相手選手に直ぐにインターセプトされてしまう。そして、とにかく体格が違う。日本の選手が壊れてしまうのではないかと、見ていてもハラハラするのだが、日本選手は怖けることなく果敢にセーヴしに行く。健気ななでしこなのである。中でも、試合前から話題になっていた相手のポイントゲッター、ワンバックについた熊谷の守備は見事であった。171cmという長身を見込まれてワンバックに付いたようだが、徹底的にマークして10cmも背丈の違う相手に、延長戦での1点を除けば殆ど仕事をさせなかった。大変な運動量であったろう。
 日本は何度も際どい危機を凌いで、前半は0-0で終わった。前半で相手に得点を入れさせなかった事には、正直な処ツキもあったと思う。ボールの支配率は日本が上回っていたと言うが、少なくとも前半ではパス回しはしていたので時間的には長い間ボールを持っていたかも知れないが、試合の流れは完全に米国にあった。だから後半になると直に、やはり地力のある米国はちょっとした隙をついて先制点を入れた。それまでの試合運びで殆どチャンスらしいチャンスも作れなかった日本なので、僕は健闘もやはりここまでかと半ば諦めかけた。しかし偉いのは選手達である。お互いに「諦めるな」と声を掛け合っていたと言う。残りも十数分となり、相手がボールコントロールで勝ちに入ったところで、宮間あやがゴール前の混戦で相手がクリアーしたボールをインターセプトして一旦ボールを止め、それをGKの動きを見切った上で左足の外側でシュートして同点とした。素晴らしいテクニックと落ち着きであった。
 米国はこれで目の色が変わったが、結局90分は終了し延長戦に入った。延長戦に入って前半ももうすぐ終わるかと言う時に、やっと熊谷のマークを外せたワンバックがお手本の様な強烈なヘディングシュートを決めた。スタミナでは勝ると思われた日本選手にも流石に疲れが見え始め、またまた力尽きるかと思われたのだが、試合終了直前に宮間の、これ以上はないと言う測ったようなコーナーキックに、今大会のMVPで得点王となった沢が、これまた絶妙に合わせて同点とした。この沢の同点シュートは何度見ても素人の僕には、どうしてあの体勢からシュートが打てたのか分からない職人技であった。
 そのままホイッスルとなって、PK戦である。オシム元全日本監督はPK戦は見たくないとベンチに戻ってしまうので不評だったが、僕もああいうギャンブル同様であるにも拘わらず選手には残酷な決着方法は好きではない。しかし、米国の最初のPKをGKの海堀あゆみが絶妙の読みと執念で止めた。これが大きかったと思う。次の米国選手に大きなプレッシャーとなってのしかかり、次の選手はゴールを外してくれた。更に三人目のシュートも海堀が止めたところで勝負は付いた。思いもかけない日本の優勝である。日本のPKの3点目を蹴り込んで勝負を決めた熊谷は、未だそれで勝ったとは認識しておらず、周りが大騒ぎになったのでワンテンポ遅れて喜びの輪に入ったと言っていた。それ位、勝負を忘れて目前の一蹴に集中していたものと見える。海堀もPKは見てはいけないルールのようで、他所を見ていたので歓声で勝ったのが分かったそうである。選手が誰も嬉しそうな事。しかも、日本は決勝戦まで一枚もイェロー・カードを切られなかったと言う事で、フェアプレー賞も受賞した。決勝戦では岩清水梓が退場になってしまったが、そのプレーもそれ程のラフプレーであったとは思えなかった。むしろシュートチャンスに丸山桂里奈が潰されたり、相手にはホイッスルが鳴らないラフプレーが結構あったように思う。男子の試合を見ているとフェアな試合運びなどと呑気な事を言う隙はなさそうであるが、それでもやはり「なでしこジャパン」にはフェアーな試合運びを伝統にして欲しいと願う。
 ろくなニュースのない日本に、素晴らしい話題を作ってくれた「なでしこジャパン」。「なでしこ」と言う言葉が世界でもそのまま歩き始めたそうである。男子サッカー以上に欧米との体格差が著しい女子サッカーで、まるで子供チームが大人チームと対戦しているような印象のドイツ、スウェーデン、米国戦を勝ち抜いたなでしこジャパンだから、欧米のメディアの目にも特異に映ったものであろう。これで頂点に立った日本であるが、体力の差は歴然としているので、1位の座を守るのは奪う以上に難しいかろう。しかし若い選手も育って来ているようだし、電車に乗れば僕より背の高い女性は珍しくないこの頃だから、「女子サッカー日本」の伝統を築いて欲しい物である。先ずはロンドン五輪で、また頑張って欲しい。