baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 通勤電車で

 さすがに今朝は胃がむかついて、抗ガン剤かくありなんと、友人に同情しながら家を後にした。それでももう郊外電車のラッシュのピークは過ぎている。
 昔はベトナムでしか見た事のなかった、殆ど腋の下まである長手袋をしている女性が最寄り駅のホームの高々十数人の電車待ちの客の中に二人もいた。もう20年近くも前の、ドイモイで突然活気が出たベトナムで、熱帯の強い日差しから肌を守る為に、自転車やオートバイに乗って働いている女性が、日本では見慣れない長手袋をごく普通に使用しているのが酷く印象的であった。ベトナムの女性は外にいる時だけ使っていたのだから、非常に合理的であったのだ。今日本では、その長手袋を別に戸外で働いている訳でもなさそうな女性が使っている。それほど高価な物とも思えないが、おしゃれなのだろうか。単なる日焼け防止ならもっとゆったりした長袖のシャツを着た方がよほど涼しいだろうに、と素朴な疑問を持った。
 電車の車内はかなり混んでいる。そこで相変わらず化粧をしている女性がいる。口を開けたり曲げたり、目をパチパチしながらマスカラーを塗りたくったり、昔は腹がたったがもう今は余りにも当たり前の風景で腹も立たなくなった。とはいえ、何度見ても醜悪な光景である事に変わりはない。せめて5分か10分早起きして、家を出る前に整えられぬものか。こういう破廉恥行為が普通になってしまった事が、どう考えても僕には理解出来ないのである。
 大体この頃の世の中は女性が保護され過ぎている。勿論痴漢など不埒な男から女性を守るのは当然である。しかし、例えば男が電車の車内で、しかもラッシュ時に、髭を剃ったら多分社会問題になるのではなかろうか。女性軍からの猛烈な抗議が来ると思う。ところが女性が化粧するのは誰も文句を言わない。僕に言わせれば、女性の化粧は男の髭剃りと五十歩百歩だと思うのだが。或いは、東京の郊外電車には朝夕、女性専用車が作られている路線が多くなった。そこは男性御法度である。ところが女性は平気でぎゅうぎゅう詰めの一般車に乗りこんでくる。男は「きゃっ、痴漢」などと騒がれない様に手のやり場にも気を使う。公平を旨とするなら、間違っても痴漢呼ばわりされたくない男性専用車があっても良いと思う。まぁ余り乗りたくない車内ではあるが、冤罪で痴漢呼ばわりされたトラウマを引きづっている僕としては、やはり公平を期した処置があってしかるべきだと思うのである。
 女性のスカートの中を隠し撮りする不逞な輩が後を絶たない。相当程度の低い犯罪だと思うのだが、新聞では頻繁に記事になる。しかし、きょうも随分見受けられたが、女性の服装については何ら制限はない。これ以上布の節約のしようがないようなパンツや、臍にアクセサリーまで付けた臍出しルックだの、これでもかこれでもかとセックスアピールして来るのには社会がまるで寛容なのが不思議である。インドネシア並みの、緩やかなイスラム法的な常識があっても良いと思うのである。リゾートや公園での話ではない。リゾートや公園なら、トップレスでも何でも好きにすれば良い。ところが日本人はトップレスになる勇気は持ち合わせていないくせに、通勤電車やターミナル駅での女性の服装には節操が感じられない事がままある。法律で規制すると息苦しくなって困るので、そうなる前に女性が自ら節度を持って欲しいのである。インドネシアイスラムではあるが、女性は普通に頭を出して、スカートで歩いている。かなり短いパンツの女性もいる。上半身のファッションは、ノーブラがいない日本と然程変わらない。でも総体的に極端に肌を露出することはない。トップレスは軽犯罪となる。そこには節度がある。
 車内では、飲み食いも相変わらずである。大の大人が僅か10分、15分が我慢できずに満員に近い社内で飲み食いをする。子連れの母親が率先してやるのだから、もう絶望的である。僕の子供の頃には人前で立ち食いするのは「犬畜生と同じだ」と躾けられて、別段疑問も懐かなかったのだが、最近思う処がある。人間の顔は飲み食いしている時はまず間違いなくバカ面になる。意識して気取って食べている時はその限りではないが、普通はポカーンと口を開けて、飲み食いする瞬間は目が宙を彷徨って焦点が定まらず、これ程のバカ面はないほどのバカ面をする。昔の、奥床しかった頃の日本人は、こういうバカ面を人前で無闇に曝す事を潔しとしなかったのであろうと思うのだ。ところが今の日本人と来たら、人前でこんなバカ面を晒す事に何の抵抗もなくなっているのが情けない。
 この頃電車の車内が節電で照明が暗いので、本が読めない。スマートフォーンを使っている人はメールだけではなく読書をしている人もいるのかも知れないが、お財布携帯がないと生活できなくなっている僕にはスマートフォーンは未だ時期尚早である。仕方がないから社内をきょろきょろと見回していると、こうして飽きる事がない。