baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 意地で邪魔をする前原誠司 〜 進まぬ八ッ場ダム工事中止見直し

 夢物語を語るばかりで普天間基地移設問題を初め外交関係や日本経済を滅茶苦茶にしてしまった鳩山由紀夫、無責任に突然の思い付き政策をぶち上げては後は放ぱらかしの菅直人と、これ以上酷い総理は二度と出ないと思われる政権が続いたが、野田佳彦が政権を取ってからやっと少し政治が動き始めた。懸案のTPP、消費税増税問題の具体的な議論が始まり、そしてこの二年間毀損するだけ毀損してしまった挙句に誰も何とかしようともしなかった普天間基地移設問題にもようやく目標を定めた動きが見られるようになって来た。当然の事なのだが、この二年間政治の空白に慣らされてしまった身には、この当然の事が何やら嬉しく思われる。
 そんな中で一向に煮え切らないのが八ッ場ダム問題である。民主党が政権を奪取した時のマニフェストの目玉の一つに「コンクリートから人へ」と言う標語の下で公共工事の見直しが挙げられた。公共工事による景気の浮揚という旧態依然の経済の舵取りの見直しのみならず、環境保護の観点からも、不要な公共工事の見直しは結構な事であった。しかしながら既に走り出してしまっている事業まで強引に後戻りさせるのは無理があるので、基本的には今後の事業計画、少なくとも見直しが間に合う事業に限定すべきであると言うのが当時からの僕の持論である。このブログにも何度も書いた事である。
 ところが当時の前原誠司国交相は誰が何と言おうと八ッ場ダムの工事は中止すると、全く聞く耳を持たなかった。何故なら八ッ場ダム工事中止は、彼にとっては単なる政治パーフォーマンスであり、そこには話題性があれば理屈は要らなかったのである。従い当然の事ながら問答無用だった訳だが、その余りにも頑なな姿勢には強い反発を覚えたものである。八ッ場ダムは、当時既に周辺工事は完了していて総予算の70%以上が使われており、水没予定地の住民の90%が移転完了していたのである。そして、もし工事を中止した場合には治水などに掛る費用はダムを完成させるよりも大幅に膨らむ、という事であった。利根川の氾濫に悩む埼玉県や千葉県、上水源を求める東京都など、地元の群馬県を含む関連6都県の全てが工事の続行を嘆願していた。そして、地域住民は生活の基盤をどう置けば良いのか決められずに、ただただ翻弄され続けているこの2年間であった。既に国が用意した代替移転地には移転せず、故郷を捨てて他所へ出て行った家族も少なくない。
 誰が考えても常識では工事中止には無理があるこのダムを、昨年11月に当時の国交相であった馬淵澄夫が地元の強い要望を聞き、改めて「予断を持たずに再検証する」と約した。妥当な政策変換だったと思う。それを受けて国交省関東地方整備局が工事を中断した場合との比較検証をおこなった結果、「予定通りの工事続行がコスト面を含め最も有利」という結論を出した。地元は、当初は反対運動をしていた住民も含め須らくほっとした結論だった。
 ところが前原誠司政調会長が激怒した。「なぜこのタイミングなのか。事前説明もない」と不快感を示したのである。このタイミングがどうして良くないのかまるで分からないが、枝野幸男の九電問題でも同様、政治家と言うのは自分が気に入らない事には因念を付けるのが常道なのである。だから「このタイミング」には特段の意味はなく、単なる因念なのである。そして事前説明もないと来た。一人一人に一々事前説明をして了解を得なければ、何も発表してはならないと言っているのだとすれば、民主党という看板は下ろして「権勢党」とでも改名してはどうか。前原誠司は党のマニフェストのみならず、何よりも自分の面子に拘って八ッ場ダム建設だけはどうしても潰す気でいるようである。そこにはコスト面への配慮は欠片もなく、ひいては国益への配慮、地域住民への配慮が全く無いのである。あるのは単に党利と自己保身だけである。
 野田佳彦は、前原誠司を初めとする党利しか考えない反対の声は無視して、この二年間翻弄され続けている地元民の苦労を除く事と、最も有効な利根川の治水を最優先に、工事続行を速やかに決断すべきである。未だ有識者会議の意見聴取など必要なプロセスはあるようだが、少なくとも政策調査会辺りからの雑音や妨害には総理が身体を張ってでもこれを防ぎ、結論を急ぐ必要がある。当初から、他のダム工事はともかく八ッ場ダムの工事中止だけはどう考えても合理性がなかった。今となっては工事続行以外に合理的な解決策はないと思うのである。