baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 続々ジャカルタ近況

 今回の出張も無事終わり、今夜のフライトで帰国する。昨日のサッカーは結局1-0でギャラクシーの勝利で終わっていた。今朝の当地の新聞ではインドネシアの善戦が賞賛されている。ベッカムや相手チームの監督も、インドネシア・チームを激賞しているが、あながちお世辞でもあるまい。相手が何処まで本気だったかは別として、少なくとも前半戦だけで言えばずっと押し気味の良い試合をしていた。
 昨日はインドネシアでは唯一のボクシングの世界タイトル保持者、クリス・ジョンがオーストラリアでウクライナのスタニスラフ・メルドフとのフェザー級タイトルマッチを行い、3-0で危なげない判定勝ちを収めた。この試合もテレビで実況中継されていたのだが、時差の関係で時間が悪くて前座戦の途中までしか見ることが出来なかった。僕は昔からクリス・ジョンを応援しているので、酷く残念であった。32歳の世界チャンピオンは今回で15回タイトルを連続防衛した事になるそうだが、これは世界タイトル連続防衛のタイ記録だそうである。
 僕は20歳頃のクリス・ジョンをテレビでよく観ていた。当時は特別上手いボクサーではなかったがとにかく真面目できれいな試合をする典型的なボクサータイプで、ポーカーフェースと言う印象であった。僕は元々ボクサータイプが好きなのだが、更にポーカーフェースの勝負師となれば厭でも特別贔屓にしてしまう。その上、勝っても精々3万円とか5万円のファイトマネーなのに、精一杯真面目に戦っていたのが印象的であった。それがいつの間にか世界チャンピオンにまで上り詰め、数年前には日本でも世界タイトル戦をしていた。大出世したものである。確かフローレス島出身の、敬虔なクリスチャンである。リングネームは「十字架ジョン」の意である。流石に最近はKO率は下がっているようだが、出来るだけ長くチャンピョンを張って欲しいものである。
 今日の訪問先はジャカルタ郊外にあった。東京から川崎か君津に行くような感覚か。帰途、久し振りにインドネシアらしい物を見た。一つはスコールである。訪問先を出発したときには既に空には黒い雲が低く垂れ込めていたのだが、高速を走り出したらあっという間にワイパーも効かない猛烈な土砂降りになった。流石に車もスピードを落として走るのだが、5分も走るともう雲を潜り抜けて明るい空が前方に広がった。こういう雨を少し離れた場所で横から見ると、その部分だけ景色全体が濃い灰色に包まれ、極く限られた範囲にだけ雨が降っているのが、雲から垂れ下がった帯のように実にくっきりと分かるのである。久し振りにスコールを走り抜けた。
 もう一つはトラックかバスのシャーシーの陸送である。以前にも書いたが、インドネシアの手作りで車体を作る技術は世界にも類がないと言う。それで、出来上がったシャーシーだけの車を車体屋に陸送する事がある。今日はそんな乗り物が3台連なって走っていた。どんな乗り物かといえば、シャーシーにエンジンとヘッドライトなどの灯火類だけが載っており、後はハンドルが生えていて粗末な運転手用の椅子が付いているだけ、他にはシャーシーの上には何も載っていないのである。その丸裸のシャーシーを人間が運転して陸送する。勿論前後のバンパーも未だ付いていない。後ろから見ればまるでタイヤとテールランプだけの車両に、運転手がヘルメットを被ってチョコンと乗って運転するのだが、見慣れないと人間がまるで無防備に見えて恐ろしい。よく考えればバイクだって同じなのだが、乗り物の最先端でカッパを着た身一つを足の先まで剥き出しにして、身体で風を切って高速道路を走っていた。そう言えばミラーも付いていないようだが、後方はどうやって確認するのだろう。