baiksajaの日記

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 オリンパスの損失隠し

 オリンパス損失隠しの実体が第三者委員会の調査報告書で明らかになった。プラザ合意後の急激な円高で業績不振に陥った同社は、1985年以降金融商品による利益捻出で不振を挽回しようとしたが、1990年代のバブル崩壊で却って大きな損失を生んでしまい、この損失を経営中枢の一部の人間が故意に隠蔽したと言う事である。その金額が最終的に1348億円に上ると言うから半端ではない。
 オリンパスと言えば内視鏡などでは世界のトップブランドだし、光学機器メーカーとしてブランド力の高い優良メーカーだと思っていた。それがこれ程の損失隠しをしていたとは、唯々驚き呆れる。のみならず、こんな不正が10年以上も罷り通ったと言う事実は、国内に留まらず海外の投資家にも日本企業の経営体質や決算書の信憑性に多大な疑義を持たれてしまう。日本企業全体に対する甚大なイメージダウンであり、また現在の株価の低迷が更に長期化するのではないかと危惧される。事は一企業の不正では留まらないと言える。
 どうしてこんな事をしてしまったのか。端的に言えば、歴代の経営者が責任を回避して役員の座に長く居座り続けたかった、の一言であろう。大企業のサラリーマンは役員になるかならないか、また役員になれても何年居座れるかで、生涯年収には億単位の差が生じる。また役員になれば車と秘書が付き、部屋が貰える。一度この味をしめると中々捨てられなくなる人が多い。それが、大損を出せば引責で役員を下りざるを得なくなり、折角のそんな特権も返上し、ただの人になってしまう。更に、余りに大きな損失が表沙汰になれば株主総会で弁明に苦労するし、下手をすれば株主訴訟をされかねない。誰でも嬉しい話ではない。それやこれやで「大損をしました」と正直に言う勇気がなく、目先の年収や特権を手放す潔さも持ち合わせていなかったのであろう。ある時期からは「本業でこれだけ儲けているのだから」と言う奢りもあったかも知れない。
 しかしここまで多額の損失を大掛かりに隠蔽したのに、10年以上も表沙汰にならなかったのは如何にも不思議である。具体的な隠蔽は極く少数の人間で為されていたそうであるから当事者以外には詳細な手法が分からなかったのは仕方がないが、1348億円もの損失を穴埋めする為に非常識な金額の企業買収を行ったり、誰が考えても破格のコンサルタント料を払ったりしていたのだから、平社員であっても多少なりとも経営に関与している人間ならその法外な金額は理解の埒外であったに違いない。それでも誰一人として告発出来なかったと言う事は、この会社は余程風通しが悪い、旧態依然のワンマン会社であったのだろうか。或いは世間が知らないだけで、不正を告発しようとして経営者側から息の根を止められた正義の社員の屍が実は累々としているのであろうか。せめて天下のオリンパスには、そういう気骨のある社員が少なからずいたと思いたい。