baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 党内バラバラの民主党

 野田佳彦が総理になって、一時は前二代の総理とは比較にならぬ程土台がしっかりしたように思えた。発言にはブレがなくなり、増してや思い付きや夢現の発言が皆無になったので、当たり前と言えば当たり前に過ぎないのだが、この二年間連日ハラハラと過ごして来た者にとってはやっと少し落ち着けるかに思えたものである。しかしその思いも束の間、やはり反自民党で集結しているだけの民主党の、人材不足と政策についての足並みの乱れは覆うべくもなかった。
 今般の田中聡沖縄防衛局長の暴言は呆れて論評する気にもならない。オフレコの取材と言う事で気の緩みがあったのだろうが、余りにも貧困な表現で沖縄県民の尊厳をこれ以上ない程に傷付けた。しかもこれ程沖縄県民の感情を害したにも拘わらず、翌日謝罪に行ったのは事務次官であった。馬鹿な官僚の尻拭いとは言え、局長と言う幹部職員がこれ程の失言をしてしまった以上大臣は責任を免れ得ないのだから、先ずは大臣本人が飛んで行くべきであった。それが国会などの関係でどうしても行けなかったのなら、せめて副大臣クラスを名代として謝罪に行かせるべきであった。ただでさへ沖縄の問題は当面の最重要政治課題なのだから、藤村修官房長官が言う如く「官僚の失態は官僚の手で」などと政治家が逃げを打つ場面ではなかった。
 しかも不祥事に輪を掛けて、一川保夫防衛相自身が「沖縄米兵少女暴行事件」の詳細は承知していないと国会で答弁してしまい、沖縄県民の怒りに油を注いだ。16年前のこの許し難い事件は、日本人なら誰でも憤懣やる方ない思いを持ち、平時の米兵の裁判権は日本が持つべきであるという思いを新たにした事件であった。それを詳しくは知らない人物が、そしてそもそも「安全保障には疎い」と自らが認めている人物が防衛大臣であったのだ。こういう勉強不足の弛んだ大臣が頭だから、その下の官僚も弛んでしまうのだと言われても仕方が無い。これで普天間基地辺野古への移設は一層難しくなってしまった。返す返すも馬鹿な発言を繰り返したものである。
 この問題を巡って野党が問責決議案を提出する事は当然であるが、本来なら一川保夫が自ら辞任するか、せめて野田佳彦が更迭すべき事態である事は論を俟たない。ところが一川保夫小沢一郎一味である事から、輿石東は辞任の必要無しと当初から公言し、野田佳彦も更迭に踏み切れないでいる。平成のラスプーチンと動くミイラの戦線が民意を蹂躙して、一川保夫を庇っている。事の推移を冷静に見れば、いかに身内の失態とは言え本来庇える内容ではあるまい。それを問答無用で庇ってしまう処に、小沢一郎や興石東の国民不在の本質が透けて見える。しかもあろう事か、普天間基地移設問題をここまでこじらせてしまった張本人の鳩山由紀夫が、またまた臆面もなく辺野古以外の移設先は必ずある筈だし、もっと探す努力をすべきであるなどと、もう己の失態を忘れた発言を始めている。今般の一連の不祥事で普天間問題ではただでさえ窮地に追い込まれてしまった野田政権を、またまた内部から鞭打つ無責任発言である。
 更迭すべき大臣は馘に出来ず、TPP交渉参加問題では党内が二分してしまい、今また消費税増税問題でも党内からの公然とした批判が相次いでいる。野田佳彦のリーダーシップが心許ないとも言えるが、やはり政策を通じて纏まった政党ではない、寄せ集めの弱さが如実に出てしまっていると言った方が正確であろう。前にも書いたように民主党には思想的にはリベラルから極左までが混在し、手法的には汚職・金権から清貧までが同居している訳だから、そろそろ政策や政治手法を一にするグループ毎に纏まって、選挙の洗礼を受けないと日本の政治は何時まで経っても覚束ない状態が続くのであろう。