baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 道路の鉄ビシ

 最近、ジャカルタでは道路に釘を撒く犯罪が増えていると言う。これはクラシックな手口で昔からあったのだが、最近被害が急増しているらしい。特にバイクの被害が多いと言う。警察は釘の回収に努めているそうで、この4ヶ月で警察が回収した釘は300kgに上ると言う。しかし警察も人手不足で釘拾いには限度があり、最近釘回収専用の、棒の先に大型磁石を取り付けた器具を導入したそうである。地雷探知機みたいな器具である。
 釘と言っても、鉄ビシのように曲げてある悪質な物も含まれる。僕も昔自分で車を運転していて、気付かずにこれを踏んでしまった事がある。大きな釘だからチューブレスタイヤでもあっという間にぺしゃんこになってしまう。そこで慌てて道端でタイヤ交換でも始めようものなら、それこそ相手の思う壺で、強盗に身包み剥がれるか車の中の鞄が消えている羽目になる。そんな事は百も承知なので、その時はガタゴトと近くの軍隊の事務所まで無理やり車を転がして、そこの駐車場を借りてタイヤ交換をした。門には着剣した衛兵が立っているから、流石の強盗もそこまでは入ってこられない。と言うか普通は僕も入れて貰えないのだが、高級車に属するクラウンを運転していたのとスーツを着た外国人だったのと、タイヤがパンクしていたので特別に入れて貰えたのである。ついでに事務所の中のトイレも借りたのだが、軍服を着た職員に怪訝な顔で見られただけで、特に咎められる事もなかった。スーツを着た外国人の特権である。
 釘を撒いている現行犯が中々捕まえられないので警察もお手上げのようだが、最近三人組が逮捕されたと言う。二人は雇われの釘撒き犯、首犯は道路際でタイヤのパンク修理屋を開いている男だったそうである。パンク修理屋といっても別に店を持っているわけではなく、道端に「パンク修理」と言う看板を立てて、中古のコンプレッサーを一台置いてミカン箱に座って客待ちをしているだけである。こういう男がそこら中に無数にいて、500円か1000円でバイクでも車でも、パンク修理をして呉れるのである。一日に幾らの実入りもない彼等が、仕事を増やすために釘を撒くのは強盗に比べれば未だ格段に程度が良い。しかし当地の警官の中には相当凶暴なのが混じっているから、現行犯で見付かりでもしたら前歯の5〜6本、腕や足の一本や二本は折られる覚悟がいる。何しろ、ひったくりでも現行犯だと射殺されかねない国柄である。