baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 今日のジャカルタ

 インドネシアでは洪水のシーズンが始まった。毎年1月末から2月中旬に掛けては洪水の季節である。洪水と言っても普通は冠水する地域は限定的で、例えば工業団地は冠水しない場所に作ってあるから時によってアクセス道路は冠水しても工業団地自体が冠水する事はまずない。従い先般のタイのような悲惨な事にはならない。ただインドネシアの洪水は統計的に5年ごとに大洪水が発生しているそうで、今年はその当たり年になると言う。油断は禁物である。もっとも僕には大洪水と普通の洪水の区別は余り判然としない。
 洪水の理由は明快で、元々ジャカルタのような地盤の低い地域にアスファルト舗装が一般化し、空き地がなくなってビルが濫立し、海との緩衝地帯であった沼沢地を埋め立てて住宅地やゴルフ場にしてしまい、更に背後の丘陵地帯の森林を伐採して宅地を造成してしまったからである。言って見ればどこにでもある、無節操な開発と都市化の帰結である。但しジャカルタでは今年は未だ大規模な洪水は起きていない。昨年末に一部の貧民街で腰ぐらいの水が溜まったというニュースを見た事はあるが、今はその水も引いているようで、取り敢えず今の処ジャカルタでは洪水は問題になっていないようである。
 今大騒ぎになっているのはジャカルタから60kmほど西に行ったセランという処で、この4日間降り続いた雨の為に高速道路が1km半に亘って水没していて、周辺の13000軒の民家が水没し、2000人の住民が避難場所がなくて青空生活をしていると言う。この高速道路はスマトラ島とジャワ島の物流の大動脈なので、この動脈が寸断され、まともな代替道路もないので大騒ぎになっている。未だ当分洪水が引く兆しもなく、むしろ来月に向けて更に水位が上がる事も予想されるので、ジャカルタ港から直接スマトラへフェリーを運航することも検討されている。このセランを含むバンテン県はジャカルタの衛星都市としてこの10年来の開発は凄まじく、全面積22万ヘクタールに占める緑地の割合は3万ヘクタールにしか過ぎないそうである。僕にはこの数字の意味は分からないが、世間ではこの緑地の割合が極端に低いと言われている。
 インドネシアではベチャッと呼ばれる輪タクが有名である。このベチャッは地方に行けば未だ現役であるが、ジャカルタでは実は大分前から姿を消している。最初に大通りから、そして今は裏道からも姿を消した。交通の邪魔になるからである。その代わりに登場したのが、バジャイと呼ばれるインド製の三輪タクシーである。小回りが利き、車が入れない裏道にもドンドン入って行くので庶民には便利な足であった。しかしこのバジャイも今では大通りからは締め出されていて、表通りを移動している限りでは目にしなくなっている。
 最近ジャカルタではこのバジャイの総台数を制限し、且つ天然ガスを燃料とする車両のみに許可を出す事にしたと言う。確かに従来のインド製のバジャイは2-サイクルで、しかも整備も不十分だから排気ガスが極めて汚く臭かった。バイクでバジャイの後ろを走るとあっという間に顔が真っ黒になった。従い環境の為には正しい方針決定と言える。しかし個人的には今回の決定には国産三輪車製造メーカーとジャカルタ市政との癒着の匂いがするので、すんなり実現するかは甚だ疑わしいと感じている。欲に眼が眩んだプロジェクトは大体詰めが甘くて、何処かで挫折するのが普通だからである。それはともかく、昨日このプロジェクトの手始めに、バジャイの免許を持たずに営業していたバジャイ30台が警察に押収され、二度と再生できないように部品に至るまで破砕すると言う事である。このプロジェクトを必ず実行するというジャカルタ市の意思の表明とも受け取れるが、僕には単なるアドバルーンに思える。何時腰が砕けるか、暫くはお手並み拝見である。破砕した筈の部品が中古市場に流れるのも時間の問題であろう。
 テレビを見ていたら突然、僕にですら聞き覚えのあるAKB48の歌が流れてきた。何事かとテレビを観れば、AKB48姉妹グループとして東南アジアに結成された最初のグループ、JKT48が早速コマーシャルに出ていたものである。これからどんな活躍をするものか。
 僕は今晩の飛行機で日本に戻る。明日の夜は東京で取引先と新年会がある。日本は相変わらず寒そうで、常夏の当地から赤道を跨いで日本に帰るのが甚だ億劫になる。すっかり毛穴が開いてしまったから、文字通り「ぞっと」するほど寒いのだろうな。