baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 夫を早死にさせる方法

 今日は昼間所用で出掛けなければならなかったので、ついでに浅草公会堂でやっていた腎臓についての講義とパネルディスカッションを聴講し、雷門でグリーンジャンボを買って、更に銀座のギャラリーで開かれていた木之下晃マリア・カラスの写真展を覗いて来た。
 腎臓についての講義は、いかに腎臓が重要な臓器であるかが細かに説明され、しかも腎臓はどんなに疲れても中々文句を言わないので腎臓が弱っている事に気付き難い、しかし一度壊れたらもう再生しない、そして行き着く先は透析である、と脅かされて来た。慢性腎臓病をCKDと呼ぶそうである。正に慢性腎臓病を英語に直訳して頭文字を取っただけの言葉で、何のセンスも感じられないからどうして横文字にするのか分からないが、最近はこういう呼び方が一般的になっているらしい。
 色々聞かされて脅かされて、それなりに勉強にはなった。しかし一番印象に残ったのは「夫を早死にさせる方法」という10ヶ条の話であった。勿論逆説である。曰く:

1. 食べたいだけ食べさせて、とにかく肥らせなさい
2. ストレス解消にお酒はどんどん薦めなさい
3. 仕事から疲れて帰ってくるのだから、甘い物を沢山食べさせなさい
4. 日頃仕事で疲れているのだから、運動やスポーツは止めさせなさい
5. 疲労回復に動物性脂肪を沢山与えなさい。卵は最低でも一日3ヶは食べさせなさい
6. 味が薄いと食事が美味しくないから、塩は沢山使いなさい
7. コーヒーは朝からガブガブ飲ませなさい
8. ストレス解消に煙草はどんどん喫わせなさい
9. 夜は好きなだけ夜更かしさせなさい
10. 間違ってもピクニックやバケーションなどに二人で行ってはいけません
(仕上げ)一日中文句を言い続けなさい。笑顔は絶対に見せてはなりません

だそうである。もっとも最近は、お酒は適量なら構わないし、コーヒーも度を過ごさなければ良い面もあるらしいので、必ずしも全てが逆説ではなくなっているようである。何れにしても、奥方が上に書いた様な事を毎日励行していたら、我々は身辺には注意をした方が良いらしい。
 浅草は物凄い人出であった。余りの人出に今日は何か特別なイベントでもあるのかと、通りがかりの交番に立ち寄って警察官に訊いてみたのだが、大体毎日こんなもので、いとも普通だという返答であった。新宿や渋谷の雑踏とはまた違うのだが、とにかく人で溢れ返っていた。道端には人力車がずらりと並んでいる。冷やかしに、銀座まで行けるかと訊いたら大丈夫だと言う。車夫達は勿論若いのだが、中には若い女性も混じっている。半信半疑で聞いていたら、さっき王子まで行った者がいると言い出した。王子までの金額は2万円だそうである。余り冷やかさない方が良さそうである。ついでにグリーンジャンボを買った。年末ジャンボは、今度こそは当たりそうという予感があったのに、結局カスリもしなかった。今度のグリーンジャンボは予感もないから、やっぱりダメであろう。
 木之下晃は音楽家の写真で有名な写真家である。僕の友人の棒振りが使っている写真の幾枚かは、やはり木之下晃の写真である。松屋の裏にある、時々行くフォトギャラリーなので帰りに立ち寄った。今日はご当人が番をしていたので、挨拶をして少し話をした。以前にも川崎で展覧会をやっていた時に挨拶しているので、一応顔見知りなのである。彼の写真の特徴は、全て銀塩のモノクロ写真で、そのコントラストが素晴らしい事である。特に漆黒が素晴らしい。まるで漆のような、深く輝く黒である。残念ながら、この黒い色が出せる印画紙がもう今は無いそうである。薄暗い演奏会場での昔の写真だから、高感度フィルムの粒子は未だ粗く、しかも増感現像してあるから独特の雰囲気である。レンズが暗いのでシャッターは60分の1が限界だったそうで、逆に多少のブレが動きを感じさせる。素人写真ならただの欠点も、才能のある人の手に掛ると味になる。楽しい写真展であった。