baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 社外取締役

 民主党が検討している企業統治に関わる提言の原案では、有価証券報告書の提出義務がある企業には社外取締役の選任を法律で義務付ける事になるらしい。素人集団の民主党は、法律で義務付ければ企業の不祥事が無くなると本気で思っているのかも知れないが、何でもかでも法律で規制するのは如何なものであろうか。ましてや社外取締役などは、入れれば必ず企業統治が改善されると言う訳でもなかろう。
 企業の不祥事は何も今般のオリンパスに限った事ではない。同様の大型粉飾決算ではカネボウの例も未だ記憶に新しい。しかし、こういった不祥事は元々、社内の風通しが悪い、ワンマン経営者がいる、利益至上主義である、殊の外厳格な信賞必罰の人事制度がある、など本質的な問題を抱えている企業に共通しているものである。そしてこれらの本質的な問題点は、企業風土である事が多く、そうであれば尚の事社外から重役を迎えたところで普通はその社外重役が孤立してしまうだけで、企業風土の陋習改善に資する効果は望めない。
 逆に社外重役を制度化する事により、民間人の天下りがより広がると言う弊害の方が大きいのではなかろうか。今も社外重役の顔ぶれを見れば、大体が他の企業の元重役であったり大学教授など、慣れ合いの人事と言う雰囲気が強い。勿論中には優秀な人も混じっていようが、大体は過去の経歴で経営陣に名を連ねているケースである。そういう人には、元々社内の風通しが悪ければ具合の悪い事は何も聞えて来ないし、社内に人脈がないからニュースソースもない。社外重役が多すぎて、業績が傾いている大手企業の例すらある。外様がいきなり権力を握ってみたところで、直ぐに経営に口が挟めるほど企業経営は甘くは無いと言う好例である。だから結局は大方の社外重役は無難にその職責を全うする為に、余程の事がない限りはシャン、シャン、シャンの経営会議に顔を連ねるだけの、しかし相当な高給取りと言う事になる。
 本当に求められる事は、企業の経営者が権力欲に溺れる事なく自らが襟を正した経営を行い、耳障りな事にも公平に耳を傾け、株主にも社会にもその責任を全うすると同時に、具合の悪い事も正々堂々と世間に公開する姿勢である。そして、保身に汲々とする事無く、上司に対して相手の顔色を慮る事無く発言すべき事は発言する周囲の人間達である。言うは易しで、そんな理想論ばかりでは昇進が覚束ないのが現実であろうし、耳障りな事はなるべく聞きたくないのは人間の性である。しかし、常にそういう企業風土を育てる努力をし、言うべきは言う勇気のある社員を大事にする文化が、本当に求められるのである。そういう風土作りに有為な人材があれば、社外重役でも何でも積極的に採用すれば良い。しかしそう言う風土作りは、幾ら法律を作って規制しても絶対に育つものではない。オリンパスの様な不祥事の為に、日本の企業を見る外国の視線が懐疑的になるのは日本全体にとって大きな損失ではあるが、だからと言って政府が法律で規制してどうにかなるものではあるまい。未だ提言の原案の段階で余りムキになるのも大人気ないが、やはり政府が民間の経済活動に口を挟むのは如何なものかと思わざるを得ない。